白緑なんて隠しちまえ ページ15
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口吻すらも苦しいものだと思わなかった。やっと私は映画のキスシーンを思い出す訳だが、微笑んでいたはずのその後のシーンは、私には来ない。
眉すらぴくりと動かすこともせず、またも無力を感じた。それと同時に、じわじわと怒りというものが私の心を蝕むような気分だった。真っ白なハート型の心があるとすれば、それを今染めるのは愛の赤なんてものではなく、ただ無力と切なさでいっぱいの黒だった。
白雪姫に出てくる鏡が、ある日突然「世界で一番美しいのは白雪姫だ」と宣言するのは、お妃様がお怒りになるのも承知の上でそう教えたのは、鏡なりの反抗なのではないだろうか。鏡はいつでもお妃様の近くに居るはずなのに、毎日話しかけてもらえるはずなのに、それでもお妃様は鏡のことを本当の意味で「見る」ことはない。鏡は、お妃様にとっては都合の良い道具なのだから。
鏡はお妃様との日常に安堵しながらも、内心は悲壮感で心が渇いていたのではないか。だから、裏切るような真似をして美しいのは白雪姫だと答えた。日常が、壊れることを知っていたのに。鏡はきっと、お妃様を恋慕していた。
白雪姫に出てくる鏡になりたいと私は望んだ。それは、私がどこまでもその鏡に似通っていたからなのだ、と納得する。
先生のその美術的な顔を、今は見るのが辛かった。その顔を、ぐちゃぐちゃに壊してやりたいとさえ思う。でも仮にも私はこの人の生徒で、憧憬の念を抱いているのであって、そんなことは出来るはずもない。甲斐のように、暴力的になれればどんなに良かっただろう。
呼吸するのが難しくなったような気持ちがして、逆流してくるような唾液をぐっと飲み込む。きゅっ、と食道が縮んだような、喉の奥から心臓にかけてが痛くなる。目頭が熱いことにやっと気付いて私は自分が泣きそうになっていることに気付く。床を双眸から流れ出る熱いもので濡らしてしまう直前に、がたっと後ろから物音がして、ハッと何かに気付いたように私の肩がぴくりと揺れる。
「A、あの」
声でその人物を特定した私は涙を飲み込んだ。その理由なんて彼女は知ることもないな、と微笑を作る。
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鑑 涙栖(プロフ) - luna???さん» ありがとうございます……！何と表して良いか分からないくらい嬉しいです、文面へ普通ですがとても興奮しております。更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年2月17日 7時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
luna???(プロフ) - 作品とても面白くて毎日、更新されたか見に来てる位本当に好きです笑また更新待ってます！ (2019年2月16日 23時) (レス) id: 654049e628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年2月14日 16時
