噫無情と嘆く薄藤の目 ページ13
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愛、という言葉が出ると妙に落ち着かず緊張してしまう。子どもの頃描いていた愛という物のイメージは、今のどうしようもない私よりも大人で、綺麗で、美しい。愛に形は無いけれど、私の感情は愛と表現するには幼い。
美女は背の高い青年の首に手を回し、くいっと顎を突き出すようにして青年の唇に己のそれを触れる。いつか見た外国の映画のワンシーンを思い出す、真っ赤な口紅が頭から離れず。その後に驚いたように目を丸くする青年の表情も、口紅に映える白い歯を見せて笑う女性も、私の知る愛は幸せそうなのに、どうして私の愛は幸せだけじゃないのだ。私の感じる愛は幸せでもなければ美しくもない。
その人を想っているのは幸せだ。その長い睫毛、何かを見つめる双眸、目が合ってずきんとのしかかるような、それでいてぱふんと跳ねるような、打つ速度の上昇する鼓動の音を思い出すのはそれだけで楽しい。けれども。想うだけで幸せ、なんて有り得ない。人間、誰かを愛してしまったら、想うだけなんて物足りないのだ。
映画の女性のように簡単に、貴方の唇を奪えてしまえば良いのに、と、身の丈に合わないことを妄想し始める私がなんて惨めで可哀想な人間かは私が一番分かっている。
ふぅ、とため息交じりにまた視線は彼の顔を捉え、逸らそうとしてもその辺りを彷徨っては逸らせない。まるで何か魔術的な力で操られているのではないかと思うほど、私の目はその美麗な顔にくぎ付けになっているのだ。魅了された瞳は再び唇へ。先程まで熱いものを語っていた口はどこへやら、今は恐ろしいほど静かで、やはり事切れているのではないかと疑ってしまう。やがて開かれるであろう口はきゅっと結ばれたままで、私はどうしても気持ちを抑えきれずやきもきしていたし、いい加減にしておけと制止するような声も聞こえるような気がしたけれど、不甲斐ない私はどうしようもなく、覚悟を決める。馬鹿だなぁ、やめておけば良かったのに、と後悔するのはまた今度。
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鑑 涙栖(プロフ) - luna???さん» ありがとうございます……！何と表して良いか分からないくらい嬉しいです、文面へ普通ですがとても興奮しております。更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年2月17日 7時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
luna???(プロフ) - 作品とても面白くて毎日、更新されたか見に来てる位本当に好きです笑また更新待ってます！ (2019年2月16日 23時) (レス) id: 654049e628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年2月14日 16時
