性別 ページ6
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本当に怒っているのか、はたまた怒った素振りを見せているのか、少女はぷくっと頬を膨らます。けれど、急に我に返り、恥ずかしくなって真顔になる。頬を染めながら。私は、クラスメイトのように可愛らしい顔をしているわけでもなくモデルのように綺麗な顔をしているわけでもなかった。何を成り上がっているんだ、と戒める、しかめっ面。百面相である。それに気付いた柊は人質とはいえ生徒の顔を見て笑うのは悪いと思ったのか、それを堪えているように見えた。決まりが悪くなって少女はため息をついた。
「目的の物って何なんだ」
「…………」
少女は俯く。少し恥じらいながら。
「言わないと返さない」
「…………先生が女性なら言いやすかった」
生徒を人質に取って人を殺す、と言ってのけ、今おそらく一番怖れられている教師とは思えないほどきょとんとした表情である。
「ああ、すみません！ 先生も男に生まれたくて生まれたわけではないし、私も女に生まれたくて生まれたわけではない、ええ」
何か一人で納得していやがる、と柊は思っただろうか。この状況をどう説明すれば良いか少女は悩んでいた。仮にも柊が女性なら、「アレです、アレ」で伝わったかもしれないそれが、伝わらない。しばらく思案したあと、少女はおもむろに口を開いた。
「sanitary……」
「え？」
「女の子の日ってやつです」
もはや少女に、まともに目を合わせて話をするなどということは不可能であった。教室では感情の起伏がほとんどないように見えるのに、顔を手で覆って恥を隠すような少女は、彼の目には新鮮に見えたことだろう。彼はそれを察したらしく、
「……それは、考えてなかった。A、ごめんな」
と素直に謝ってみせる。良いんですよ、大丈夫です、と良い子の見本のように弁解。人質に謝る犯人など、前代未聞、少女は何故だか歯痒い思いをした。さてどうしよう、とりあえず返してもらおうか。鞄、と一言呟くと、本当に申し訳無さそうに彼は手にした黒い鞄――しっかり自分の物だった、名前も目印になるような物も付けていないのに、よく分かったな、と少女は思った――を側にあった机の上へ置いた。こんな状況でも、教師の面白い姿が見られて少女は愉快であった。殺してやろうか、などと考えていたことはすっかり忘れていた。
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鑑 涙栖(プロフ) - ゆうさん» 閲覧、コメントありがとうございます！ ドラマ沿いにすると夢主の台詞をどう会話に突っ込んでいいか分からないのでこのような形になっています(笑)風変わりなものを書いていると思いますが、こうしてコメントをいただけるととても嬉しいです (2019年2月15日 16時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 初めてコメントします。ドラマ沿いの小説が多いなか、少し違った視点、角度からの小説だったので新鮮でした。 (2019年2月14日 23時) (レス) id: b0c7457ca7 (このIDを非表示/違反報告)
鑑 涙栖(プロフ) - のあさん» 閲覧、コメントありがとうございます。陳腐だなんて滅相もない、その言葉だけで私は随分救われてます。ありがとうございます(笑)偏人三面相のほうも読んでくださってるんですか……！あちらも更新頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年2月3日 17時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 、初めまして。本当に本を手に取って読んでいるような感覚でした。陳腐な言葉ですが、とても面白かったかったです。素敵な小説をありがとございました。偏人三面相の方も楽しみにしています！ (2019年2月3日 17時) (レス) id: 30887f6f4e (このIDを非表示/違反報告)
鑑 泪栖(プロフ) - りょうさん» 楽しんでいただけたようで幸いです！ コメントもありがとうございました！ 作中作の構成や、冒頭部分を最後にもう一度持ってくるのが好きなのでこのような構成になりました(笑) (2019年2月1日 16時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年1月24日 21時
