帳面 ページ11
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柊が次に鞄から出したのは、一冊のノートだった。栗色の表紙には何も書いておらず、授業で使うようなノートにも見えない。しかしノートには開き癖がついており、頻繁に何かが書き込まれているか、読まれているか、という状態である。訳もなく、不意にノートの内容が気になって、柊は鞄をいじる手をピタリと止めてノートにその手を伸ばした。柊の脳内からプライバシーという言葉は、すっかり抜け落ちていた。あ、先生それは、という少女の声は途中で途切れた。少女が止める前に、彼がぺらぺらとノートの頁を捲り始めたからである。
終わった、と少女は思った。特に疾しいことが書いてあるわけでもないが、個人的な事を書き留めていったあのノートを、人に見られた。その事実が恥ずかしくて顔を覆う。少女は文学が好きだった。読むだけでは飽き足らず、ついに書くことに興味を持った。しかし、小説など書いたことは無く、自信があるはずもなく、誰かに公開することはなかった。ひっそりと、少女だけが存在を知る栗色のノートの上で、その物語は紡がれたのである。それを見られた、しかも担任教師に。顔から火が出るとはまさにこの事だ、と少女は思わず呟いていた。
「ええと……つまり、その、私小説といいますか、その……」
一生懸命弁解しようとしたが、柊にそれは聞こえていない。彼は聴力を失ったのでは、と疑うほど熱心にノートを捲り続けたのである。今すぐそこから立ち去りたい、けれどまだ目的も果たしていない、相反する気持ちがそこにはあった。少女は嘘を吐いた、あれは、小説なんかではない。小説のように見せかけた――ただのクラスメイトへの悪口である。見ようによっては。クラスメイト個人への悪口ではなく、クラスという団体への悪口、と言ったほうがいいのかもしれない。とにかく教師に見られてはいけない物ベスト5には入るであろう、「他人への悪口」を少女はいとも容易く見られてしまったのだ。殺してくれ、と思った。このような特異な状況だからか、今日は感情の移り変わりが激しい。それにしても、彼は文字を追うのが早くないか、と少女はついにそんなことを考え始めた。
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評価するか否か、高評価か低評価かは個人の自由であり私が口出しするまでもないのですが、低評価であればどこが悪かったか、どこを直せば良いか教えていただけると幸いです。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鑑 涙栖(プロフ) - ゆうさん» 閲覧、コメントありがとうございます！ ドラマ沿いにすると夢主の台詞をどう会話に突っ込んでいいか分からないのでこのような形になっています(笑)風変わりなものを書いていると思いますが、こうしてコメントをいただけるととても嬉しいです (2019年2月15日 16時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 初めてコメントします。ドラマ沿いの小説が多いなか、少し違った視点、角度からの小説だったので新鮮でした。 (2019年2月14日 23時) (レス) id: b0c7457ca7 (このIDを非表示/違反報告)
鑑 涙栖(プロフ) - のあさん» 閲覧、コメントありがとうございます。陳腐だなんて滅相もない、その言葉だけで私は随分救われてます。ありがとうございます(笑)偏人三面相のほうも読んでくださってるんですか……！あちらも更新頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年2月3日 17時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 、初めまして。本当に本を手に取って読んでいるような感覚でした。陳腐な言葉ですが、とても面白かったかったです。素敵な小説をありがとございました。偏人三面相の方も楽しみにしています！ (2019年2月3日 17時) (レス) id: 30887f6f4e (このIDを非表示/違反報告)
鑑 泪栖(プロフ) - りょうさん» 楽しんでいただけたようで幸いです！ コメントもありがとうございました！ 作中作の構成や、冒頭部分を最後にもう一度持ってくるのが好きなのでこのような構成になりました(笑) (2019年2月1日 16時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年1月24日 21時
