訪問 ページ2
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コンコン、とまるで高校の面接試験のように礼儀正しい動きで、少女は美術準備室の扉をノックした。地味な印象で、物静かそうな少女だった。胸の上まで真っ直ぐに伸びた黒い髪と、膝の隠れる長さのスカートが、彼女の真面目さを物語っているようであった。顔は悪くもないが良いとも言えない。「地味な女子高生」の見本のような少女だ。
「なんだAか」
扉があちら側から開き、成人男性の声が飛んでくる。少女は女性の平均よりも少し低い身長、上目遣い気味に飛んできた声の主を見つめる。
なんだ、とは何だ、失礼な。と少女は思ったが胸の内に留めておくことにする。今のこの発言の主に文句を言えば、どんな酷い仕打ちもやってのけてしまう気がしたのだ。逆らうことはせずに、けれど少し皮肉って。
「ここから出してくださいな、一颯せんせー」
「サイコパスは虚言癖があるっていうよな」
「そんなこと言っちゃ駄目ですよ。貴方仮にも私の教師でしょう」
一瞬で嘘――虚言と言うべきか、それを見抜いたのは流石である。それが美術部員だった彼女と柊一颯の日常的な会話であったことを知らなければ。少女はこうして、意味もなく、すぐにバレてしまうように棒読みで嘘を吐く。それはいとも簡単に、平常心に、頻繁に。そういう意味では、柊の言う「サイコパス」も間違いではないのかもしれない。
「それで？ 何しに来た」
感情のこもっていないような声で柊は問う。それは、まるで面接官のように、ぼんやりと。知りたいには知りたいが、知らなくとも特に問題はない、そんな気持ちが見て取れた。
「いや、まあ。鞄を返してほしいなぁ、と思いまして」
自分の立場を分かっているのか、と柊の顔に書いてあるのが少女にも分かった。冷酷な瞳で柊は少女を見つめ返したが、怯むことなく少女はあはは、と乾いた笑いを見せた。まあそうなるよな、と独り言のように少女は呟き、さてどうしようかと考え込んだ。思案する表情を見て柊、用がないなら教室へ戻れ。そう命令し扉を閉めようとした。
「ちょ、ちょっと、待ってください先生。本当に用事があるんですよ。何しろやばいものを私、身体に抱えておりまして」
その言い分から、薬か何かの類いだろうか、と柊は考えたのか、怪訝そうな瞳のままだが扉を閉めるのを止める。彼女に持病など無いはずだが、と思いながら。やっと話を聞く気になったか、と少女は口を開いた。
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鑑 涙栖(プロフ) - ゆうさん» 閲覧、コメントありがとうございます！ ドラマ沿いにすると夢主の台詞をどう会話に突っ込んでいいか分からないのでこのような形になっています(笑)風変わりなものを書いていると思いますが、こうしてコメントをいただけるととても嬉しいです (2019年2月15日 16時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 初めてコメントします。ドラマ沿いの小説が多いなか、少し違った視点、角度からの小説だったので新鮮でした。 (2019年2月14日 23時) (レス) id: b0c7457ca7 (このIDを非表示/違反報告)
鑑 涙栖(プロフ) - のあさん» 閲覧、コメントありがとうございます。陳腐だなんて滅相もない、その言葉だけで私は随分救われてます。ありがとうございます(笑)偏人三面相のほうも読んでくださってるんですか……！あちらも更新頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年2月3日 17時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 、初めまして。本当に本を手に取って読んでいるような感覚でした。陳腐な言葉ですが、とても面白かったかったです。素敵な小説をありがとございました。偏人三面相の方も楽しみにしています！ (2019年2月3日 17時) (レス) id: 30887f6f4e (このIDを非表示/違反報告)
鑑 泪栖(プロフ) - りょうさん» 楽しんでいただけたようで幸いです！ コメントもありがとうございました！ 作中作の構成や、冒頭部分を最後にもう一度持ってくるのが好きなのでこのような構成になりました(笑) (2019年2月1日 16時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年1月24日 21時
