一編のような彼ら【短編】 (ページ8)

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心拍数_２ページ8

隠してたつもりが、あっけなく本は先輩の手もとへ

「え…ここ行きたいの？」

『私が興味ある学部そこしかなかったんで』

なんて咄嗟に嘘をつく

「まじか、一緒か」

『…じゃあ、私家で勉強するので失礼しますねっ』

先輩から本を取って、急いで図書室を出る

こんなの見られたら、好きって言ってるようなもんだ

現役の時から気にはなってたけど、いつの間にか引退して結局想いを伝えられなかったから、隠し通すつもりだったのに

とにかく早足で靴に履き替えて傘を差して歩く

すると校門を過ぎたところで、突然後ろから肩を掴まれた

振り向くと息を荒くしたスンチョル先輩が

『え、先輩？』

「俺Aに、言いたいことがあんだけど」

『…』

「俺と付き合ってくれませんか」

『…はい？』

あまりにも突然過ぎて、先輩の言ってることが全く理解できなかった

ひとまず濡れる先輩を傘に入れる

『あの…どういうことですか？』

「いや、薄々気づいてただろ？」

『待って意味わかんない』

「は？嘘だろ、気づかれてるのかと」

『全然そんなの探知してません』

「めちゃくちゃ鈍感」

『だってそういう素振りなかった

普通にからかってるだけかと』

「俺のアピールはウザ絡みだと思われてた？」

『そういうものだと思ってました』

「あのな…

怪我した時は心配だったから慌ててあんな風に抱えてしまったわけで」

『心配してくれてたんですね』

「当たり前だろ」

『先輩ってなんだかんだ、その…優しい人なので誰に対してもそうなのかと』

「俺、Aにしか優しくない」

真っ直ぐ私の目を見て話すスンチョル先輩

普段は目を細めながらからかってくるのに、時々こうやって見せる真剣な眼差しに慣れない

そういえば前にも、先輩がまだ現役の時に私が怪我をして黙っていたら、誰よりも早く気づいて叱られたなんてこともあった

『なんでいつも先輩にはバレるのかな』

「それは、、好きだからだろ…」

『自分で言っといて照れるのやめてください

こっちも恥ずかしい』