２話 訪問者 ページ3
朝ご飯をすませ、出陣部隊も見送った。乱には隊長になってもらったし、
きっと誰一人怪我をせずに帰ってくるだろう。
「よし、皆も頑張っていることだし私も頑張らなきゃな」
昨日書き忘れた報告書に手を付けようとしたその時。
「主」
「あ、長谷部。どうかしたの？」
「玄関に客人がお見えですよ」
「そう。政府の方かな、訪問予定は無かったはずだけど・・・。長谷部、教えてくれてありがとう」
「いえいえ。では」
とりあえず客人用の玄関に向かう。もしかして新しい刀剣男子が実装されるとかかな。
そんな想像をしながら
「はーい」
と呑気に扉を開ける。でも、わたしの目の前に立っている人は政府の人では無かった。
「A様、お迎えにあがりました」
「・・・え」
絶句した。そこにいたのは昔から神代家に仕える執事だったから。
どうして。どうして此処にいる。ぐるぐるとあの悪夢の様な日々が頭の中で回り続ける。
「帰って下さい」
一言、それを絞り出すのがやっとだった。
「そういう訳にもいかぬのですよA様。お父様の命でして」
「尚更です。この本丸の敷地から今すぐに出て行って下さい」
「まあまあそう言わずに。お父様は、貴方を神代家に改めて迎え入れたいと。
それから、今までつらく当たって済まなかったと仰っており、近々本家にお呼びしたいと」
何を考えているんだろうあの人は。私がそれで許すと思っているのだろうか。
「だから！あの人の言う事なんて聞くつもりはさらさら無いんです。帰って下さい」
私が語気を強めると、執事は大げさに驚いたような表情をした。
「・・・おやおや随分と嫌われてしまったようだ。では、また来ますね」
軽く礼をして執事は去っていった。
「・・・はぁ」
執務室に戻ろうとすると、角からこちらを覗いている黄緑色の目と目が合った。
「覗くつもりはなかったんだけど・・・ごめん」
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作者名：るま | 作成日時：2019年4月2日 14時
