.06_02 ページ44
.02
「大丈夫だから」
「…Aさん、」
「ほら、こっちおいで」
しょげきって背中を丸めた福田君が私の隣にちょこんと座る。身体だけは大きくなったくせに、どこまでも小さく見えるのは内緒。横から福田君の肩を抱くとポンポンと一定のリズムで肩を優しく叩きながらよしよし、と呟く。
そうしていると福田君がこてんと私の肩に頭を預けてくる。おや、と思っていると規則的な寝息が聞こえてきた。福田君の頭を何度か撫でると自分のと福田君の飲みかけのジョッキを空にする。流石にお腹がたぷたぷだなぁとか考えながらも店員さんを捕まえて会計をお願いする。支払おうとした瞬間福田君がガバッと起きてだめです!と言いながら自分の財布を取り出し会計をすませる。
「いつも奢ってもらって悪いから、ほんと出すって…」
「いーんです!その代わりまた聞いてください!」
「まぁ、私なんかでよければ」
「Aさんが、いいんです」
さっきまでふわふわしてたくせに急に真面目な顔でこっちをまっすぐ見つめてくるから、不意にどきっとしてしまった。夜風が酔いを覚ましていくけど、この胸の高鳴りはなかなか治まってくれそうにない。だめだだめだ、福田君はただの後輩で、芸能人でもあって、ファンの人がいっぱいいるんだから。そう自分に言い聞かせながらも隣を歩く福田君と不意に手がぶつかる。そうするとさも狙っていたかのように福田君の手が私の手を包み込む。やば、酔いは覚めてきたはずなのに顔に熱が集まる。
「Aさん、今度のライブ…来てください。」
「私行っていいの?」
「…俺のこと、見に来てください。」
だからまた、連絡します、と言って私の家の前で足を止めた。どこか寂しそうな、名残惜しそうな顔をしている。
「ほら、そんな顔しないの。ご飯も、それに送ってくれてありがとう。また近いうちにご飯いこっか?」
「…はい!」
そう言うとぱぁっと笑顔で頷く福田君。笑顔でじゃあ、おやすみなさい!と言って私がマンションのエントランスを抜けるまで手を振っていてくれる。どこまでも可愛い後輩だなぁと思いながら部屋に着く。
まだ手に残る福田君の温もりと、さっきのじっと私を見る視線を思い出してなんだかまた顔が熱くなった。これから先この気持ちが恋と知り、福田君の猛アタックの末付き合うことになろうとはまだ知らない。
.
.
お気に入り登録評価ありがとうございます!次の話で丁度50話に行くと思います。最後まで宜しくお願いします!
136人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時