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散歩の途中、いつも安全な道をちょっとだけリードを外してティアラを歩かせることがある。勿論心配なので電柱から電柱の間とか、ごく僅かな距離だけだけど。リードに繋げようとティアラを呼んだその時、何を思ったのかティアラはいきなり走り出してしまった。

「ちょ、こら、待てって!」

流石に犬のスピードには追いつけず、ティアラの姿はどんどん小さくなっていく。必死に追いかけると人影がみえて、ティアラがそこに収まっているのがわかった。運がいいといえばいいが、その分迷惑をかけてしまっている。

「ティアラ!まてっ……て、え?」

きっとティアラが飛び込んで行ったのだろう、ティアラを抱き上げる女性は尻もちをついていた。その顔がこちらを見上げる。

心臓が飛び出るかと思った。朝日が差して、その人の綺麗な栗色の髪が綺麗に反射している。髪色と同じ色の綺麗な瞳がこちらを向いて、何も言えなかった。バカ、お礼を言わなきゃ。はやく何か言えよ俺。

「あ、あの!うちの犬がすんません!!」

自分が想像していたよりも何倍もマヌケな声が出た。やべえ、超恥ずかしい。心臓がバクバクいってるのはきっと、ティアラを追いかけて走ったせい。その人がうちも昔はよく……と言いながら立ち上がったとき、その人の頬が濡れているのに気づいた。しかも当の本人は気づいてなくて、ティアラが涙をすくうようにその人の頬を舐めた。

「あんの、大丈夫ですか……?」

思わず聞いてしまったその一言にビックリした様に頬に手を当てティアラを俺に渡すとごめんなさい!と言ってUターンして走っていってしまった。何があったのか知らないけど、なんだかそれがすごく引っかかった。

「あ、あの!!」

思わず大声で呼び止める。数メートル先のその人の足が止まった。

「俺、明日もこの時間に散歩してるんで……あの、またうちの犬構ってやってください!」

何を言ってるんだ俺は。よりにもよってティアラを構ってやってくださいとか今かける言葉かよ、大丈夫ですかとか聞けよ。そう心の中でツッコミを入れながらその背中を見ていると小さく頷くようにして、走って去っていってしまった。え、これはOK貰えた……?ティアラが早く行くぞと言わんばかりに俺の腕の中から飛び降りると足早に家に帰った。

綺麗な瞳と、小さな背中がその日は頭から離れなかった。早く明日になれ、そう思いながら一日を過ごすのだった。

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設定タグ:超特急 , 短編   
作品ジャンル:恋愛
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なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時

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