【ディアソムニア寮・セベク】-きっと未来で-※三人称(リクエスト作品) ページ33
ナイトレイブンカレッジ・鏡の間。
Aは一つの鏡の前で立ち尽くしていた。
(やっぱり……来てくれないか……)
式典服に身を包んだAは視線を自分の足元へ向ける。
今日はナイトレイブンカレッジの卒業式。
Aは4年の学園生活を終了し、元の世界に帰る方法も見つかっていた。
だが、中々あと一歩が踏み出せない。
この鏡に少しでも触れれば帰れるというのに。
彼女を縛らせているもの……それは片思い中のセベクの存在が大きかった。
「セベクっ……」
「呼んだか、人間」
後ろからかけられた声にAはハッとなり、振り返る。
「セベク……?」
そこにはセベクに似ている青年と、彼に抱えられた幼い男の子がいた。
「そんな顔をするな。前にも言っただろう? 僕はお前の笑った顔が好きだと」
セベクによく似た青年は、そう言って優しい微笑みを浮かべる。
「あ、の……あなたは?」
「直に分かる、静かに聞いてくれ。今のお前に言っておきたい事があって、僕は今ここにいる」
そう言って青年は真っ直ぐな瞳でAを見る。
「僕はずっとマレウス様のお側にいられることが幸せだと思っていた。だが、A。お前の側にいるのも悪くない。それどころか……身に余るほどの幸福を感じている」
フッと微笑んだ彼の姿は少しずつ薄くなっていく。
「未来で待ってる。この子と一緒にな」
「バイバイ、おかーさん!」
青年と少年はそう言って姿を消してしまった。
「人間! 見つけたぞ!」
大声で話しかけられAは体を震わせる。
「セベク!?」
「……急な話になるが! 愛している! 僕と共に、茨の谷へ来てくれないか?」
顔を真っ赤に染めて、セベクは彼なりのプロポーズをする。
「いきなり、だね。セベクっ……」
「な、泣くな! 僕はお前の笑った顔が好きなのだからな! 返事は、どうだろうか?」
Aはセベクの言葉を聞いて、先程の青年が言っていた事を思い出す。
そして彼女の中で全てが繋がった。
「私も、セベクが好き!」
***
「帰ったか」
過去から帰ってきたセベクと息子をリリアが出迎える。
「ただいま戻りました」
「リリアおじいちゃん! お母さん、すごく綺麗な人だったよ!」
「くふふ。知っておる」
リリアは息子をセベクから受け取ると、寝所へと歩いていく。
セベクはその姿を見送ると、奥の部屋へと歩いていく。
そこには静かに眠るAの姿が。
「……何百年経とうと僕は、Aを愛している」-fin-
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Licht-リヒト-(プロフ) - ハイドさん» いえいえ! ご希望に応えられたようで安心しました! 「カリムって大切な人が傷つけられている場面を見ると、人格変わりそう……」と実際は分からないんですけど、そうだったら良いなぁと思いながら書いていました! リクエストありがとうございます! (2020年10月14日 13時) (レス) id: dfd8bd8685 (このIDを非表示/違反報告)
Licht-リヒト-(プロフ) - ミリアさん» 出来ました! こんな感じで大丈夫だったでしょうか? (2020年10月14日 13時) (レス) id: dfd8bd8685 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - リクはトレイでお願いします。 (2020年10月13日 13時) (レス) id: e8a27bc902 (このIDを非表示/違反報告)
ハイド - Licht-リヒト-さん» リクエストに応えて頂き、ありがとうございます!あかん、スカラビア組で一番怒らせちゃいけないの、カリムだあ…ジャミルも怒らせちゃいけないんだけど(ガクブル (2020年10月13日 9時) (レス) id: c3c1291a5b (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 凄く良いですね。 (2020年10月12日 20時) (レス) id: dba8a79b51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Licht-リヒト- | 作成日時:2020年9月10日 18時