ツイステッドワンダーランド短編集-2nd-

【イグニハイド寮・オルト】-寝不足注意-※三人称(リクエスト作品) ページ28

Aはフラフラと覚束ない足取りで、学園の廊下を歩いていた。

相棒のグリムは先にオンボロ寮へと戻っている為、Aは一人きりだった。

「Aさん？ 大丈夫？」

不意にかけられた声に振り返るとオルトが首をかしげていた。

「あ、オルトくん？」

「大丈夫？」

「うん……寝不足なだけだから」

そう言った直後、Aの体がぐらつき倒れそうになる。

「危ない！」

オルトは寸での所で彼女を支える。

「良かった、怪我はないみたい……」

安心したオルトがAの顔を見ると、眠っていた。

よほど眠かったんだろうとオルトは悟る。

オルトは彼女を抱えてオンボロ寮へと向かう。

(軽い、ちゃんとご飯食べてるのかな。目の下のクマもひどかったし)

オルトは自身の腕の中で眠る彼女を、ジッと見つめる。

(兄さんもゲームに熱中しすぎて倒れる事とかあるけど……)

そんな事を考えていると、いつの間にかオンボロ寮へと着いていた。

「Aさん？ オンボロ寮に着いたよ？」

起こすか起こさないか迷ったが、起こす事に決めたオルト。

「ん……え？」

眠いのか目をこすりながらAはオルトを見つめる。

「え？ 私……！」

「あ、Aさん！ 暴れちゃ危ないよ！」

Aが動いたことでバランスを崩してしまったオルト。

二人はそのまま倒れこみそうになる。

「もー、危ないよ？」

しかしオルトが素早くAの背中と太ももを手で支え、空中に浮いたことで倒れる事は免れた。

「浮いてるっ……」

オルトに抱っこされている状態のAは眼下に広がる地面を見て、彼にしがみつく。

「大丈夫。すぐに降りるから」

その言葉通り、すぐに地面へと降下したオルトはそっとAを下ろす。

「ごめんね、ありがとう。送ってもらったばかりか、助けて貰って」

「ううん、気にしないで！ こういうのは兄さんで慣れてるから。だけどAさんは女の子なんだから寝不足に注意しないとね？」

「うん、そうだよね……」

Aは苦笑を浮かべる。

「それじゃあ僕もう行くね。お大事にね、Aさん！」

「うん、オルトくん！ ありがとう！ 気を付けてね！」

「はーい！」

Aは空を飛んで帰っていくオルトを姿が見えなくなるまで、見送り続けた。

-fin-

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