昔の話 ページ29
『彼は、コネシマ』
そっと撫でた風に沿って彼女を見ると、ふにゃりと緩んだ笑顔を向けていた。
以前どこかで見たそんな気がした。彼女の黒い髪は柔らかく波打ち揺れた。
彼女が笑顔を向けるコネシマという男に、ゆっくりと近づいて金髪の前髪を指で掬った。
「ん、？」
重そうに開かれた瞼からは優しいスカイブルーの瞳が覗いた。
「あぁ？お前、だ、れ、ゃ‥‥ｯ」
のっそりと起こされた意識と体で、真っ直ぐ俺を見たあと、意識がハッキリしたのか目を見開いて動かなくなった。
『‥‥シッマ？どうしたの？寝ぼけてる？』
おーい、と声を掛けながらスカイブルーの瞳の前で手をゆっくりと左右させる彼女を他所に、コネシマは奇妙な事を呟いた。
「なんで、ここに、お前、いつ、」
「グルッペ、ン」
『あれ？シッマ、グルッペンの事知ってるの？友達？』
「A、」
そう呟いて、コネシマはボロ、と涙を流しだした。
「A、？」
「はは、お前。ほんまにいきなりやなぁ。まさかとは思っとったけど、会いにくんの早いわぁ」
『どうしたの、シッマ』
コネシマが泣いているのを見てつられてしまったのか、少女は顔を歪めていた。
「いや、すまん。大丈夫や。ほんですまんけど、Aちょっとコイツと二人で話しさせてくれへんか？」
『んー、分かった！あっちでお花の冠作ってくるね。あ、あんまり虐めたら駄目やからね』
「虐めへんわ!!」
はーい、と手を振りながら小走りで走って行く彼女を見送ったあと、コネシマはふっと目を細めてニカッと笑った。
「すまんすまん。グルッペン久しぶりやな、無事で良かった」
久しぶり？無事？何がなんやら分からなかった俺は頭にはてなマークを浮かべて首を傾げる。
その話しぶりはまるで何十歳も年上の大人に見えた。
「‥‥？え、？もしかして覚えてないんか？何や、お前は失敗か。」
うーん、と考える仕草をした後コネシマはニヤッと口に弧を描き、試してみるか、と呟いた。
「悪いなグルッペン。もしかしたら死ぬかもしれへん。でもお前なら、、」
そう言ってコネシマという男は乱暴にも俺の脳の鍵をこじ開けた。
続く
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ラビット_(プロフ) - 初めて読ませて頂いたのですが、とても面白いです。！更新、楽しみにしております。 (2022年2月20日 18時) (
レス) id: bc77977d93 (このIDを非表示/違反報告)
野菜炒めのもやし - おもしろ過ぎて禿げる(禿げんな) (2021年9月5日 23時) (レス) id: 804c6352ce (このIDを非表示/違反報告)
実況者大好き - まって！続き楽しみすぎです！体調崩さない程度に頑張ってください！ (2021年5月4日 22時) (レス) id: 30ee96ed2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いぬ | 作成日時：2021年3月31日 15時
