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岩の陰に身をひそめて様子を伺う。
Jがいっていた頂小屋というのは
昔、気候観測所として使われてたらしい
コンクリの倉庫っぽい建物だった。
小屋のまわりには誰もいないみたいだ。
あそこに、カズがいるのか……
今、どうしてるかな？
きっと、怖い思いしてんだろうな。
『キャッ！！』
あの時のカズの悲鳴がよみがえる。
ただでさえ色白の肌が
恐怖からさらに青ざめて……
その姿を思い出すと
1分1秒でも早く助け出してやりたい。
『サトシ、助けて。。。。』
きっとカズがおれの助けを待ってる…
いや、おれじゃなくて、サトシを待ってる。
そんでさっきからチリチリ胸のあたりが痛いのは
おれじゃなくて、サトシの意識がそうさせてるんだ。
このまんまだと
ホントにおれ体も乗っ取られちゃいそうだけど
カズを助けることだけを考えれば
今はサトシに乗っ取られてた方がいい気がする。
だって、おれじゃなんもできねーもん。
ウデに覚えがないってのもあるけど
やっぱり、愛する人を助けるのは
その人を愛する者の役目だろ？
おれは、カズを可愛いとは思うけど
"愛してる"ってのとは違う。
だってカズを愛してるのはサトシなんだから。
『……オーノさん！やだ！助けてっ！』
｢…えっ？！｣
｢どうかなさいましたか？！
何か異変でも？！｣
｢あ、いや…なんでもない……｣
おれの声に、軍人Aが不思議そうな顔をする。
(メンドくせぇからそう呼ぶことにした。)
……今の、なんだ？
すげぇ、はっきり聞こえた……
あれは、カズじゃない…
ニノだ。
ニノが…
おれに助けを求める声……
ギュッと胸がしめつけられるみたいに苦しくなる。
そんでこれは、サトシのじゃない。
これは、おれんだ……
心臓がバクバクする。
何が、あった？
…いや、なんかあったかなんて
今のおれにはわかんねーけど……
でも、あの声はとても空耳とは思えなかった。
早く、戻らなきゃ。
早く帰んなきゃ
おれのいた世界に。
じゃなきゃニノが……
｢王子！あちらを！｣
軍人Aが指さす方を見ると
何かが光を反射させて、キラキラと光っている。
それはJからの突入の合図だった。
｢よし、行くぞ！｣
ニノのことが気がかりだったけど
今のおれは
目の前のことに集中するしかなかった。
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