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静まり返る大聖堂。
重厚なドアが開くと、みんな一斉にそっちを見る。
ぱぁっと光の輪が広がるみたいに
祭壇に向かって光の帯が延びて
そこだけ輝いて見える…
その光の中心に、その人は立っていた。
「うわ、スゲ…」
思わずつぶやいてた。
一歩進んで大聖堂の中に入ると
おれに向かって、この前みたいに
ドレスの裾をつまんで会釈した。
そして、にっこりとほほ笑むと
ゆっくりと歩き出す。
一歩一歩、軽やかに歩くたびに
真っ白なドレスがひらりと揺れて
なんていうか…
すごく、綺麗だ……//
こうして見るとマジでニノにそっくりだけど
やっぱりカズはどっからどう見ても
女の子、なんだよなぁ…
すっげぇ不思議な感じだ。
それにこのまま式が進めば
おれ、この子と、その、ほら…
誓いのキス…とかするんだろ?///
"ドキン…"
そこまで考えて、ふとまたあの夢を思い出した。
思わず無意識に唇をさわってしまう…
やべぇ、なんか違ったイミで
ドキドキしてきた……//
思わず一瞬、カズから目をそらした。
その時だった。
『騙されるな!!その王子はニセモノだ!!』
「キャッ!!」
どこからともなく声がしたかと思うと
列席者に紛れていたらしい男たちに
カズが囚われていた。
『キャーー!!』
『王子がニセモノ?!』
『何を言っているんだ!?』
『王女が!カズ王女が!!』
騒然となる大聖堂。
一番後ろの席に待機していたショウが
とっさに剣を抜こうとした。
「動くな!静かにしろ!!
少しでもおかしな動きをする奴がいたら
王女の命はないぞ!!」
男たちに囚われたカズの細い首すじには
短剣が突きつけられている。
「大人しくしていれば王女に危害は加えない。
王女を返してほしくば本物の王子がひとりで
ヴェント山まで来い!」
「何を言っている!無礼者め!!
そこにいらっしゃる王子は正真正銘のご本人だ!
ねぇ、王子!?」
腰の剣に手を添えたままのショウが
いきなりおれにふってくる。
「え?お、おれ?
お、おお!そうだとも、おれは本物のサトシだぞ!」
「ふんっ!王子が本物じゃないことは
宰相殿が一番よくご存じだろう?
つべこべ言わず、本物の王子を連れてこい!!」
そういうと男たちは周囲を威嚇しながら
カズを連れて重厚な扉の外へと消えていった。
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