36 ページ36
.
その後のJの働きは素早かった。
残っていた軍の精鋭たちにテキパキと指示を出し
王女救出のための編隊を組み装備を整えさせると
あっという間に準備が終わった。
そして王女の救出のため
ヴェント山へと向かった。
ヴェント山はその名の通り
『風の山』だった。
大昔は緑豊かで美しい山だったのが
噴火で焼かれ溶岩に覆い尽くされてからは
風を遮る木々のない荒れた岩山になってしまったらしい。
おれたちが登り始めると
すぐに強い風にあおられた。
「上に行けば行くほど風が強くなるぞ!
足元に気をつけろ!」
Jが先導する軍人達に声をかける。
ゴツゴツした岩が転がる坂道を登るのは
…マジでしんどい。
なんでおれこんなことしてんだ?
もちろんカズを助けるためなんだけど
あんまりしんどいから思わずそんなこと考えちゃう。
だって足場も悪い上に、風も強くて
ただ山を登るのとは全然違うんだよ!
しかもこれ本当ならサトシの仕事だろ?
いくら身代わりだからってなんでおれがこんな目に…
あっ……『おれ』がいたからカズがさらわれちゃったんだ……
じゃあおれのせい、か?
…って、おれだって来たくてココ来たわけじゃねーし!
ったく、どこのどいつか知らねーけど
覚えてろよ!
借りはキッチリ返してやるからな!
そんなこと思ってゲンナリしてるおれとは対照的に
ショウとJは精悍な顔つきのまま黙々と山を登っていく。
しばらくすると、切り立った岩が
道の両側にそびえるところに出た。
「ご注意を…
ここを抜けた先で敵が待ち伏せしているかもしれません…」
Jが手だけで合図を送ると
軍人2人が岩壁にそってジリジリと
用心深く進んで行く。
あと少しで抜けるか……
というところで
『うわぁっ!』
『ギャアー!!』
という声とともに、2人がその場に倒れた。
「チッ!…やはりいたか…」
Jのその言葉に誘われたかのように
岩にはさまれた道の先をふさぐようにして
デカい男が姿を現した。
.
42人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ