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「…う、うわぁ。気持ち悪っ」
突然何を言い出すかと思えば、音に対しての罵倒だった。手で耳を塞ぎながら眉を顰めている。
「調律してないから音狂いまくりだ」
「ふーん……絶対音感とかあるわけ?」
「ないない。今の私はきっと、相対音感じゃないかな。というか、みんなそういう話好きだよね。やっぱり才能っぽく感じるから?」
饒舌によく分からないことを語り始めるのを見ると、本当にこれがAAの趣味らしい。何から何まで意外だ。まずそもそも、趣味なんてものを持っていたこと、そして結構ガチだったこと、こんな高尚な趣味であったことも。
「五条くんでもこれは知ってるでしょ?」と意地悪そうに笑みを浮かべ、片手でメロディーを弾くAA。
「えっと、運命?」
「そ、ベートーヴェンの曲。交響曲第5番ね。じゃあこれは?」
「……あれだ、風呂が沸いた時の」
「そうそれ!あはは!人形の夢と目覚めって言うんだよ!知ってた?」
「全然」
ものすごく、楽しそうにしている。こんなにはっちゃけている姿は初めて見た。いつもは何万年も生きてきた不老不死の生き物のように感じさせられる雰囲気も、今だけは年頃の女みたいだと思った。結局何歳なのか知らねぇけど。
「全然指動かない。定期的に弾かないとダメになるね」
「へぇ」
「君はピアノとか習わなかったの?」
「やらされそうになったけど、拒否った」
「想像できるなぁ。ま、プロ志望じゃなきゃ大人になってから教室に通ってもいいしね」
目を輝かせて鍵盤に魅入られている様子に、思わず笑いがこぼれた。ダメだ、意外すぎる。ぜってーそんな柄じゃないだろ。
「何笑ってんの」
「はは、いや、別に?」
「君もそうやって笑うか。私の趣味を知った人はみんなそんな反応するんだよね。失礼すぎる」
今度は拗ねた。くるくると表情を変えて、今度は本棚ならぬ楽譜棚の方に立ち、何かを探し始めるAA。
「でも私、確かにそういうのも好きなんだけど…あった!」
「?」
「イタリア歌曲集!懐かしい、沢山勉強した」
「なにそれ?」
「声楽を学ぶ人達はみんなここからやるんだよ。声楽って、歌ね。オペラとか」
「…お前も?」
「超大昔に勉強した。今は無理だなぁ」
オペラ歌手のAA?うわ、ガチでイメージ湧かねぇ。
嘘つかれてるとかじゃないよな?なんでオペラ歌手目指して、その先になったのが呪術師なんだか。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時