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実家から高専に戻ってきた。衣服の入った大きな荷物を持って自室へと歩いていると、任務帰りの五条くんが寄ってきた。
「よ、A」
「…五条くん」
「なんでそんな死にそうな顔してんの?」
相変わらず君は無神経だ。いや、これは私が理不尽か。
「色々あってね」
「…実家に帰ったって聞いたけど。もっと言うなら、葬式だって」
「……なんだ。全部知ってて、そんな風に言ったんだ…」
ほら、やっぱり君が無神経。目から涙が出そうになった私に五条くんは焦ったのか、「え、いや」などと呟く。
「俺は別に、誰が死んだとか知らねーし」
「だからって、言い方ぐらい考えなよ…お葬式に行ったって分かってるなら、さぁ」
「…あーいや、それはマジで悪かった。なぁだから、泣くなよ」
泣くなよ、と言われると逆に泣きそうになるのはなんでなんだろう。俯いた瞬間、1つ、2つと水滴が地面に落ちる。五条くんにまでキツく当たって、何してるんだ私。
長い腕が私の背中に伸びて、ポンポンと一定のリズムで叩かれる。赤ちゃんようなあやし方に、五条くんのチグハグさを感じた。
「…ごめん五条くん、大丈夫だから」
「大丈夫って顔じゃねーだろ」
「でも、もういいから」
そこまで言うと、あやす手を止めて、目を合わせられる。虚ろな目であろう私とは対照的に、君の目は青くて綺麗だった。いつの間にか、サングラスを額の上まであげている。
「あー……っと、誰が…?」
「…おばあちゃん」
「…つーことは、お前の歌の先生か」
「……うん」
五条くんには何度もその話をした。私がどれだけ頼りにしていた人だったのか、五条くんには伝わっている。そんな人が亡くなってしまったその重大さにも、今気づいたようだった。
「その、なに。ご愁傷さまデス…?」
「…うん」
「……お前、これからどうすんの?」
「…五条くんまで、それ聞く?」
自嘲気味にそう言うと、困った顔をされる。そうだよね、君には、関係ない話なのに。
「……もうね、分かんないよ。将来のことなんて考えられない」
「…」
「こんな状態で歌手なんか目指せないのは知ってる。でもじゃあ、私から音楽を抜いたらなんになるって言うの。何も無い、なんにもないんだよ」
自暴自棄になって、「このまま身を投げ出して死んでしまいたい」とまで思うようになった。全て忘れたい。夢であってほしい。
「これからとか考えたくない。ごめん、こんな暗い話して」
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時