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お葬式のことは、あまりよく覚えていない。周りの泣き声とお経はぼんやりとだけ聞こえてただ何も考えずに座っていた。
おばあちゃんのファンだった人、お弟子さん、共演した仲の人。私の知らない多くの人が、おばあちゃんの死を悲しんでいた。
まだ生きているみたいに綺麗にしてもらったおばあちゃんの顔は、今にも起きそうで。ほんの少し期待してしまったけれど、そんな奇跡は起きない。呪術師をやっている自分だからこそ、死人が生き返らないことはよく知っている。
お葬式の最中、受験科目のソルフェージュでお世話になっていた先生から話しかけられた。
「Aちゃん」
「…せんせい」
「体調は、その、大丈夫…じゃ、ないわよね」
「……レッスンに長らく伺うことが出来ず、申し訳ございません」
「体調不良なら仕方がないのよ。それに、お祖母様も亡くなられて…ねぇAちゃん、あなたこれからどうするの?」
先生の意図がなんとなく分かる。私の音大受験の話だろう。心配してくれてるんだ。おばあちゃんの意志を継いで、私を音楽の道に進ませたいんだろう。それぐらいこの先生とおばあちゃんは交流があったと聞いている。
「…すみません、今はまだ、考えられなくて」
「……そうね。まだ整理がつかないわよね。でももし、まだ夢を諦めていなかったら連絡ちょうだい。私は、あなたを応援しているから」
優しくて責任感の強い人だ。でも今は、そのどちらも辛い。
これからどうするかなんて、何も分からない。だっておばあちゃんという師匠は亡くなって、私の歌の師匠はいなくて、そもそも長いブランクがある。
音楽なんて、こんな気持ちでできっこない。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時