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夏油くんがいなくなっても、相変わらず呪術界は世の中のために回り続けた。特級術師1人が抜けた穴を埋めるのは五条くんしかいないからか、繁忙期を終えても彼は忙しそうだった。
しかもよく話を聞けば、高専を卒業した後は教師になりたいそうだ。まさかあの五条くんが人に教える職に就こうとしているとは、誰にも想像できなかっただろう。ただ、今の五条くんなら、向いているかなとも思った。
私は相変わらず、誰にでもこなせるような任務に回される毎日。中途半端な立場でも、仕事があるという事実に段々安堵するようになってきた。きっとそれは、自分の長所が長所ではなくなりかけているから。
大丈夫、それでも、音楽は再開できるはず。
街中に流れるクラシック程度なら、平気になった。
楽器や楽譜を持っている人を見ても、羨ましいだけになった。憎らしくない。
繁忙期が終わって少し余裕が出来たのもあるんだろう。私は少しゆとりを持って生活を送るようになった。
「(だから後は、受験を支えてくれた人達に連絡を取ろう。メールが来ていたのに返してもいなかった。謝って許してもらえなくてもいい。謝るのは、私のため)」
懺悔する。特におばあちゃん、私の歌の師匠。色んな先生に教わったけど、おばあちゃんは誰よりも私を見てくれていた。歌を、教えてくれた。
こんな不甲斐ない孫でごめんなさい。もう1度、歌をみていただけないでしょうか。
連絡、連絡しないと。連絡、連絡、連絡を。
「…え?」
「A、だからあなたも、最後に挨拶なさい」
「え、いや、な、なんの、冗談」
「……A」
「おばあちゃん、亡くなったの」という母の声。
瞬間、世界から音が消える。何も、聞こえなくなる。誰かの話し声も、自然の音も、全て消え去る。
病気、だったらしい。知らなかった。私、何も、知らないまま。
おばあちゃん、死んだ。死んじゃった。もう会えない。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時