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灰原雄くん。2年生。ひとつ年下。明るく元気で誠実で、ご飯をよく食べる子だった。
灰原くんがいると自然とその場も明るくなって、彼と話すのが好きだった。同学年の七海くんとは仲が良く、2人は性格が真反対でも、むしろそれがピッタリと当てはまってるように思えた。
そんな2人を見るのは楽しくて、微笑ましくて。
「…なんで」
灰原くんが亡くなったという報せが私に届いたのは、長期任務から帰ってきた直後だった。
あまりにも身近な人が音も立てずにいなくなった事実が、頭を真っ白にする。なんで、どうして、どういうこと、死ぬって何。
会っていないけれど、確かに彼は1週間前姿を見かけた。忙しいこの時期にも灰原くんは笑顔で隣の七海くんと歩いていたというのに。
「あ、あの、A、先輩」
「…」
「…先輩?」
「…伊地知くん。ごめん、ちょっと、信じられなくて」
訃報を知らせてくれたのは、今年入ってきた伊地知潔高くんだった。何度か任務も一緒に行ったことがある仲だ。伊地知くんには嫌がられるかもしれないけれど、私は、私と伊地知くんは似たもの同士で弱いもの同士だと勝手に思ってる。私達はお互い、術師としててんでダメなのだ。
けれど、まだ伊地知くんは1年生。これからがある。
ただし私に関しては、一向に術師として成長していない。
そんな役にも立たない私より先に、灰原くんが亡くなった。彼の方がずっと、呪術師としてのポテンシャルも人望もあったのに。
「……代わってあげられたら良かったのにな」
「そ、そんな、そんなこと」
「…ごめん、不謹慎だった」
ぽつりと、謝ると同時に、涙が溢れる。
どうしよう、なんて情けないんだ。
悲しい、凄く辛い。
灰原くんにもう会えないことがしんどい。
役に立つ、立たないとか本当は
ただ、あの太陽みたいな後輩が死んでしまった事実が胸に鋭く刺さったのだ。
私がこんなに辛いのなら、親友の七海くんや可愛がっていた夏油くんはもっと辛い。泣いてはいないのかもしれないけど、死ぬほど辛いに決まってる。
結局、先輩としての格好はつかず、私は伊地知くんにオドオドと慰められながら、涙を枯らし切るまで流したのだった。
私を困惑しながら慰める伊地知くんもまた、もらい泣きして鼻をすすり、目尻に涙を溜めていた。
お互い、泣いてしまったことは生涯秘密になるのだろう。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時