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硝子ちゃんは卑怯だ。“歌”を持ちかければ私が揺らぐと思ってる。
「…いいかもね」
「……は?」
「歌えなくなれば、言い訳できる」
その言葉は、本心であり、嘘であり、憎しみであり、愛であった。好きで好きでたまらないのに、殺したくなるほどの嫌悪もある。ただ愛していただけの歌と将来の夢は、今となっては人をも殺せる凶器に似ていた。
「…ごめん硝子ちゃん、私、任務あるから」
何も言わなくなった硝子ちゃんの手を振りほどき、目的地へと向かう。
あんな風に驚かれるほど、私は歌が大好きだったみたいだ。
でも今は、できない自分が不甲斐なくて歌えない。あれだけ多くの人が私を支えてくれているのに、無下にしてしまった。その事実が重くのしかかる。
術師としても歌手としても未熟な、そんな私の行く末は、一体何なのだろうか。
「(そもそも、たとえ歌う時間を確保出来たとしても、お金が無い。大学に行くお金がまだ、足りていない)」
1年浪人する?いや、レッスンの先生方との縁はどう考えてもここで切れる。となれば、また違う先生を探して、通って、それから。
それから。
それからの話は、その時の自分に託そう。
浪人してまで音大を目指す覚悟が、未来の自分にあるのなら。それなら、少し自分に自信を持てるかもしれない。
“やっぱり歌が大好きなんだ”と、胸を張れる。そんな気がした。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時