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そうやって見ないふりを続けてきた3年の夏。
私は任務と受験勉強の両立が破綻しかけていた。
その夏は呪霊が大量に湧いたので、否が応でも任務に赴く機会が増えたのだ。
そして受験生は今が頑張り時。
他の子達が全ての時間をレッスンや練習に費やしている中、私だけが呪霊と戦っている。
確実に、精神的にも体力的にも削られていた。不安で泣く夜が不定期に訪れた。
おばあちゃんには怒られた。もっとちゃんと練習しないと受からないって。ごもっともすぎて「はい」としかいえなかったけど。
歌やピアノは、1日練習をしないだけで3日分前の実力に戻ると言われている。
任務で何日も演奏出来ていない私は、一体どこまで戻ってしまったのだろうか。
そんなことすら考えるのも最低だ。こう思っている間にも呪霊によって人が死んでしまうのに。
みんな忙しいのに1人だけレッスンに行くのも、段々と苦痛になってきた。
音楽にも仲間達にも、申し訳ない、死んでしまいたいと思いながら、それでも足掻く毎日だった。
夏油くんはこの時期にさらに痩せて、とうとう五条くんがそれに関して突っ込んだけど、そこで終わった。
くまができていた。
私も何か声をかければよかった。「大丈夫?」「無理しないでね」と。
でもそれは私自身が言われたい言葉だと気づいたら、言えなかった。
所詮、私の自信は強がりだ。確かに同年代と比べたらそりゃ歌だって得意だろう。でも、同じ音大受験生と比べたら?私に才能があるかなんて保証はどこにもない。他の子達がどれくらい上手なのかとか、それすらも分からない。
普通の大学なら、模試で偏差値が分かる。音大には無い。そんな便利なものがあれば、音楽は発展していないだろう。
そして、もし仮に私から音楽が抜け落ちたとき、そのとき私に残るものは、なんだろう。
そう考えたら、何も無かった。何も無いんだ。私は本当に、音楽しかなくて、それを諦めたら空っぽ。なのに呪術師をやってお金を稼いで、今そのせいで音楽家になる道が閉ざされかけている。
でも呪術師を辞めるわけにはいかなかった。まだ大学に通うための費用が足りていなかったから。というか、全然足りていない。もっと任務に行かなくちゃ。でも任務に行ったらレッスンに行けない。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時