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呪術師になるつもりなんてハナからなかった。

だって私、歌手になりたかったし。

おばあちゃんが歌ってるのを見て、自分もやりたいと思ったから。本当に、それだけ。

でもお父さんが、音大に行くなら金なんか出してやるもんか、とか言うから。だから仕方なく高専に通ってお金を稼ぐことにしたの。


「(…続ける気なんて、なかったよなぁ)」


かなり前のことなのでうっすらとした記憶だが、確かそんな経緯だった。父親の言うことも今なら理解出来る。だって音大なんて、金だけかかってろくな就職先もないし、才能とコネがなくちゃ到底売れないし。
娘のことを案じて、意地で言ったんだと思う。

でも私は諦めきれなくて、叔父の紹介で呪術高専に2ヶ月ほど遅れて入った。もう既に同級生3人の空気は出来上がっていたけれど、硝子ちゃんも夏油くんも受け入れてくれた。呪術の呪の字も知らない私に基礎から教えてくれたのも2人。私が卒業後も術師を続けるつもりがないことは知っていながら、優しく接してくれた。

ただ五条くんだけは、途中からの、弱っちい女に、しかも呪術師にはならないと公言した人間に、嫌悪感を示していたのをよく覚えている。だから私と五条くんの間には、大きな溝があった。


そんなある日、自販機で飲み物を買っていたら、不意に現れた五条くんが私に話しかけてきた。


「なぁ、お前術師向いてねぇよ。帰れ」


「…びっくりした。急にどうしたの、五条くん」


「帰れっつってんの。お前みたいなのがやってけるほど甘くねぇんだよ、ここは」


そんなことは百も承知で、私はこの場所に来た。本当なら音高にだって行きたいぐらいだけど、ただお金が必要だったから、給料のいい呪術師という仕事を選んだだけ。

そして、五条くんが私に対して本気でそう思っていることも知っている。
彼は確かにいじめっ子体質だが、私への苦言は恐らく嘘ひとつもないんだろう。
本気で、「私が辞めるべきだ」と思っているんだ。


「ありがと、五条くん。警告してくれて」


「…はぁ?」


「そうだよね、生半可にやったら死ぬ仕事だもんね。
でも私、死んででもやりたいことがあるの。
だからやめられない。ごめんなさい」


私はそう言って、丁寧に頭を下げた。そんな様子に呆気にとられた五条くんの様子に気づいたのは、顔を上げた数秒後。少し気まずくなって、私は飲み物を片手にその場を後にした。初夏を少し過ぎた頃の話だ。

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設定タグ:五条悟 , 呪術廻戦
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇‍♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時

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