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AAのことを知るには、もうこの手しかない、と思い詰めていたのが原因だった。
どれだけ調べてもピンとくるものが無くて、AAがいない時に例の部屋を開けて調べていたのだ。楽譜は読めねぇから、CDを中心に聞いてみるのを手段にして。
ただ、聞いても高尚すぎてっつうか、外国語だからなんもわかんない。優雅な曲なのは感じ取れても、そこに込められたアレやコレは何一つ。
それで少しの間放置してた。けど、やっぱもう1回とか思ったのが良くなかった。
少し早く帰ってきたAAに、見つかってしまったのだ。スマホ片手に、アイツのCDを聞いている様を。
怒られるかと思った。だってこれはアイツの大事なもんで、それを知っていたから。知った上でもちろん大事に扱いながらも勝手に使った。普通に考えれば、最低な行為。
でもAAは怒らず、それどころか、俺が興味を持った様子に喜んでいた。実際には、俺が興味あるのはこの音楽じゃなくてAAだけど。
「教える…!教えるよ、私に任せて!」
そう言って、目を輝かせながら荷物を置きに行った姿に拍子抜けする。本当にガチで、これが好きで、しかも誰かに共有したいって思うのか。
てか、良かった。もし叱られて、この家出禁とか、嫌われたりしてたら俺は。
「(いや、それぐらいのことはしただろ)」
さすがに反省はすべきだ。バレなきゃいいとか思ってたけど、そもそも誠実であるべきだし。
ただの、雇い主なんだから。
「五条くん、おまたせ」
「…ん」
「君が聞いてたトスティから一緒に聞こうよ、楽譜もあるんだよ」
「楽譜は俺読めねーよ」
「何となくでいいんだよ。初めは何となくで」
AAはそう言うけど、たぶんこれから先、俺が音符を辿れる日は来ないだろう。
正直、本当に、お前がこれを好きだって言うから調べてただけで。
「歌詞も書いてあるよ、後ろのページには日本語訳も。結構大袈裟というか、なかなか見ない単語とかも出てきてね」
「へぇ」
「ほら、大体愛とか死について歌ってる。そんなのばっか」
「これって何語?」
「イタリア語」
俺は多分、AAの指さす楽譜なんて真剣に見てない。
ただ、楽しそうに話をしているのが良いと思った。
俺マジで、アンタの好きなもんは一生かかっても理解出来ねぇよ。でも、こういう時間は案外好きだ。
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作者(プロフ) - 那奈さん» ありがとうございます😌私生活との兼ね合いもあり更新ペースが下がっていました💦頑張ってこれからも書いていくので、よろしくお願いいたします☺️ (4月22日 21時) (レス) id: 4fb250efc4 (このIDを非表示/違反報告)
那奈 - とっても素敵な作品だと思いました。難しいとは思いますが、更新してくださると嬉しいです。 (4月22日 8時) (レス) @page37 id: 3264f93205 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 栗ここなさん» ありがとうございます😭試行錯誤しながら書いている作品なので、作者冥利に尽きます☺️これからもぜひお楽しみください😌 (3月27日 18時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
栗ここな(プロフ) - このシリーズ本当に好きです!続きをいつも楽しみにしてます🥰 (3月25日 21時) (レス) id: c0504a419b (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - メルさん» ありがとうございます☺️こちらでもコメントしていただけて本当に嬉しいです😭頑張って書こう!という気持ちになれます🙇♀️これからも応援よろしくお願いします! (3月19日 13時) (レス) id: b4c68f46cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年3月18日 16時