山吹102 ページ2
「いないのか」
男が呟くように言う。
そこに居る者は少なからず土蜘蛛たちの存在を知る人物であり、恐ろしさを知る人物である。だがそれでも単独で来たということは殺される覚悟があるのだろう。
男は迷った末、「なぜゆえ参った」といつものように聞いた。
「村長にお会いしたい」
男は目を伏せながら応えた。己の場所に気づいている様子はない。
「長は余所者とは会わない。戻られよ」
「そうはいかない。後戻りは出来ぬのです」
「なにゆえに」
「宝刀雅鳳(がほう)を譲って頂きたく」
繁む林がゴウッと鳴った。身を潜めていた銀は、その大きな体躯を露にし、ドゴンッと音を立てて降り立った。
赤い般若の面。
黒い目元から覗くのは金色に輝く瞳であった。
オレンジの日光に反射して、男の瞳はキラキラと輝く。
十メートルは有に超える体躯。
銀は間髪入れずに男へ拳を振り下げた。
拳に刀が重なる音を聞く。
銀は目を細めた。
やはり入らなかった。
男は刀身を鞘に収めたまま、静かにそこに佇んでいる。見れば片手で衝撃を堪えていた。
「雅鳳は我が郷の宝刀。余所者にやる筋合いはない」
銀は体制を整えるために飛び跳ねた。男は音も立てずに刀を腰帯に差し込む。
その時、初めて銀は男の顔を見た。
その顔(かんばせ)は見事な佳人であった。
整い過ぎているともいえる。
よもや麗人が男の格好をしているとすら思った。よく見れば線が細い。刀に手を置くその指は男とは思えぬほどに節がなかった。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。まだ続きは書かれる予定なのですか？書いてくださるならいくらでも待つので更新頑張ってください！ (7月5日 19時) (
レス) @page21 id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
茶白猫好き(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2022年7月8日 19時) (レス) @page12 id: e24cbecaf8 (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました！！！更新ありがとうございます！応援しています！ (2021年12月12日 17時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらき | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/43825162
作成日時：2021年12月12日 16時
