僕は僕の青春を取り戻す【∞】2 (ページ21)

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＃ページ21

◎まるやまさん

思い返せば、倒れる前の晴人は妙に大人びていた。高校生のころはよく一人でシクシクと泣いていることがあったのに、卒業してからはそんなこともなくなった。むしろ、僕たちに感情を出さなくなったような気がする。

だけど、これからは気兼ねなく甘えてほしい。だって僕らからしたら年下だし可愛い弟なんだから。

「晴人、今何歳？」

『23歳やけど…そんなん聞かんくてもわかるやろ？』

「ふふっ。わかるけどね。でも晴人はわかってないんとちゃう？」

『なに？どういうこと？』

きょとんとした顔でこちらを向く晴人。
高校生の頃のあどけなさも随分と薄まり、そのぶんちょっぴり男らしくなっている。

「晴人はな、23歳やねん。もう大人かもしれんけど俺たちよりは若いし、何より俺らからしたら可愛い後輩やねん。」

『ほぉ…。』

「だからな、そなたは甘えても良いのでござるよ。嫌なことがあったらちゃんと言っていいし、相談してほしいのでござるよ。」

『そうで、ござる…か？』

頭の上にはてなが飛んでいる様子の晴人。
なんか締まりが悪くなった感が否めないけど、言いたいことは伝わった、かな？

「だから、子ども扱いくらいさせてよ。晴人は大人すぎるねん。」

俺がそう言うと、晴人は照れ臭そうにそっぽを向いた。なんか、遅れてきた反抗期みたいやな。

しばらくするとメンバーも全員集まり、PV撮影が始まった。久しぶりの長時間の現場で心配してたけど、晴人がしんどくなることもなく順調に撮影は進んでいった。

『丸ちゃん。』

休憩中、ペットボトルをぐるぐると回している晴人が声をかけてきた。

「ん？どうした？」

俺が振り向くと、なんだかうつむいて目線を合わせてくれない。少し遠くから、ニヤニヤした大倉がこちらを見ていた。

『丸ちゃん、さっきはありがと。』

そう呟いた晴人は、俺の顔も見ずにぱたぱたと大倉の元へ走っていく。

そんなことをきちんと言いにきてくれたのだと思うと、なんだか急に愛しくなってきてしまった。

「晴人ちゃ～ん！逃げんといてよ～！！」

俺はすぐさま晴人を追いかけていく。大倉を盾にして隠れている彼の腕を掴み、羽交い締めにしてやった。

『丸ちゃん！ギブ！ギブ！たちょ助けてー！』

晴人の顔に笑顔が戻る。
久しぶりに8人が集結して、この笑顔が見られて、無性に幸せを感じた。

青春時代、周りの目を気にしてあまり甘えられなかった分、これからは存分に甘えてほしい。