僕は僕の青春を取り戻す【∞】2 (ページ20)

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◎まるやまさん

2012年夏。

この夏初めて地上波のドラマで主演を務めることになり、その主題歌に関ジャニ∞の曲が起用されることになった。

そしてこのシングルから、白岡晴人がグループの活動に復帰することが決まった。

「晴人ちゃ～～～ん♡来てくれて嬉しい！」

『うげっ。丸ちゃんに捕まった。』

待ちに待ったPV撮影の日。朝一番に楽屋に入ると、ソファーに遠慮がちに腰かける晴人の姿があった。

『もーう、丸ちゃんやめてよ。』

「そんなん言わんと～せっかくやねんから！」

『せっかくやからハグするとか聞いたことない。』

嫌そうな顔をしてる晴人だが、ソファーからずれて俺が座るスペースをそっと空けてくれた。俺はその空間に腰を下ろす。

「晴人、最近またベース練習してるんやろ？」

『うん。ツアーも始まるから。ある程度弾いとかないと忘れちゃってる。』

「また晴人と一緒にベースできるなんて幸せや～」

『もう、リップサービスはやめてよ。』

そう言った晴人はうつむいて、ぶつぶつと文句を言い始めた。ベースが難しいだの、なにも覚えていないだの、丸ちゃんは誰にでも優しいから信用できないだの。しまいには今日は来なかったらよかったとまで言いだす始末。

最初はうんうんと頷きながら聞いていたものの、次第にマイナス思考野郎の悪いクセが出てきた気がして、その口を両手でむぎゅっと閉じてやった。

「晴人！文句はここでおしまい！今日は俺らがちゃんとサポートするし、見知ったスタッフさんばっかりやから安心して？」

『まる、んぐっ、ちゃ…ん、息、でけへんっ。』

「マイナスなこと言わんって約束して？そしたら外したげる。」

俺がそう言うと、ブンブンと首を縦にふる晴人。上目遣いでこちらを見てくる晴人が可愛すぎて、思わず意地悪をしてしまった。

俺は口から手を外し、その頭を撫でてやる。

『もう！丸ちゃん。子ども扱いせんといて。』

ぷんぷんと怒る晴人が可愛くて、思わず吹き出してしまう。こうやって感情をちゃんと出してくれて、ひとまずホッとした。

実は先日、晴人以外のメンバーとスタッフさんで、彼が復帰するにあたっての話し合いをした。

その中で決めたことのひとつに、晴人が本音で話せる環境を作ることがある。

吐き出せない思いや傷を抱え込んで、彼の心が再び壊れてしまわないように。できるだけのサポートはするつもりだ。