拾弐 ページ12
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炎柱様と向かい合い、正座する。目の前の彼も背筋を伸ばし姿勢を正していた。
「楽な体制でお聞き下さい」
「何だ!」
「炎柱様、せめてこの屋敷にいる間だけでも自分の身体を一番に考えていただきたいのです」
ここ数日彼の様子を見ていて流石に耐えられなくなったのだ。暇さえあれば厳しい鍛錬をしようとする。私が重い荷物を運んでいればそれを肩代わりしてしまう。
「私めがこのような提言をすることは大変失礼だと重々承知しております。しかし炎柱様のお怪我はそう軽いものではないのです」
体制によっては、折れた骨が内蔵を圧迫してしまう。そのまま臓器を傷付ければもっと怪我が悪くなる。医者ではない私にもわかることだ。
「どうか無理をなさらないで下さいませ」
ゆっくりと頭を下げそのままの姿勢で静止する。これも、母の教えである。必ず鬼狩り様の傷を癒して差し上げなさい。身体が完全に治っていない状態で彼らを送り出すのは許し難いことだ、と。
「わかった、善処しよう!」
そう答えた炎柱様はいつも通りだったが、それから激しい鍛錬や無理な身体の動かし方はしなくなっていった。
やっと胸を撫で下ろし、私は墓の前で父と母に祈る。
「お父さん、お母さん、どうかあの方をお守りください」
すぐに傷が癒えますように。誰かの命を救う過程で、自分の命をすり減らすこと等ありませんように。
ただ、そう願っていた。
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シルビア★姉貴 - 中村さん» もし良ければ私と鬼滅で合作しませんか?? (6月14日 16時) (レス) id: e86143b1ee (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - NIKOさん» お読みいただきありがとうございました。感動していただけたならばとてもとても嬉しいです。 (6月11日 18時) (レス) id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - Lullさん» コメントありがとうございます。沢山お褒め頂けて嬉しいです。続編もお読みいただけると幸いです。 (6月11日 18時) (レス) @page29 id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
NIKO - 面白過ぎですよ…涙腺崩壊させる気ですか? (6月11日 9時) (レス) @page29 id: 412fd2ba39 (このIDを非表示/違反報告)
Lull(プロフ) - 完結おめでとうございます。占ツクにはなかなか無い地の文多めのお話で雰囲気がとても好みでした……煉獄さんとの日々が丁寧に描写されていて没入がとてもしやすかったです。続編楽しみにしております。 (6月6日 20時) (レス) @page24 id: 96403d796f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作成日時:2023年6月4日 0時