34話 ページ10
パパ黒は笑った。
「ふっ、ククッ......」
口元を押さえて静かに笑う姿を黙って見る。
私も一緒になってワッハッハと笑いたいけど、そんな絵面は必要とされていないし何よりステーキと一緒に斬られそうで怖い。
パパ黒の出方をじっくりと見守ることにした。
弱火でじっくり。
どこかで聞いたことのある台詞が脳内再生される。パパ黒は笑い終わると、頬杖をついてこちらを見下ろした。
「生憎と相手が悪かったな」
ひんやりと冷たい空気が漂い始めた。
それを醸し出しているのは紛れもなくパパ黒と私なんだけど、やはりステーキが冷めてしまう。
「嘘を付くとき体が嘘を付いている。俺が五感が良いことは知っている口だろ?」
そこまで言われると嫌でも分かってしまった。
両面宿儺の時も姉さんの顔色1つで私が居ることを理解されちゃったし、今だって心臓の音とか、息を呑む音とか、瞬きの回数とか、色々察せる所はある。
人間には誰しも感情を読み取る能力が高くも低くもあって、それがパパ黒の場合、天与呪縛によってカンストしているのだろう。
……だから人からの悪意に気づきやすかったりもしたりして。
ステーキとパパ黒を交互に見ていると「何者だ?」を猛禽類の獲物を狙うかのように鋭い目で見られる。
何者かだと?
「......幼稚園児」
これしか答えるものが無いと思った。
しかし、スゥ......っとパパ黒の目が細くなる。
ですよねー!
「呪術師という単語には?」
「聞いたことない」
「呪力という単語には?」
「知らない」
はぁ、とパパ黒自身が溜め込んでいた空気を一気に吐き出される。
その間、胸の中に閉じ込めている心臓の音を体全体に響かせながら言葉を待つしかなかった。
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にゃーちゃん - めっちゃ面白いです!更新楽しみにしてます! (2022年12月26日 18時) (レス) @page16 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
yuumin - すんごい面白いですね! これからも更新がんばってください! 応援してます❕ (2022年9月30日 18時) (レス) @page16 id: a4f8ad7b79 (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ猫(プロフ) - 一気に読んじゃいました!!めっちゃ面白くて楽しく読ませて頂きました!!!♪( ´θ`)更新頑張って!!めっちゃ応援してます (2022年9月29日 3時) (レス) @page1 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - 一気読みさせていただきました…!続き待ってます…! (2022年9月25日 17時) (レス) @page16 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
kotorei - 一気読みしました‼︎お話とても面白かったです!!!更新お待ちしてます (2022年9月20日 18時) (レス) @page16 id: 45d1041675 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:_ | 作成日時:2022年9月3日 16時