0と1の円舞曲 Mov.2

いつまでも未練は#2 ページ25

先輩と一緒に仕事するようになってからまだ二年と少し。けどこの業界において二年という月日は長い方に分類される。
　私よりも四つ年下で、私よりも色々な部分で大人な人。気難しい人という烙印を押されている割に実は人見知りな先輩に代わって、外部の人とのやり取りや上司との打ち合わせをこなし、事務処理が苦手な私に代わって先輩がスケジューリングや報告書をまとめる。
　元々得意分野が違うだけで仕事に対するスタンスや、趣味が似ていたこともあって、お互いにビジネスパートナーと認め合うまで時間はかからなかった。そしてそんな関係のまま、気がついた時には数年枯れたままだった女心に火が点いていた。

　私は例によって、元カレの影響で男性不信な部分がある。先輩への想いを自覚したが一歩を踏み出せずにいて、けれど時折触れる指や、突然近くなる距離に少女のようにドキドキして、恋とはこんなものだったのかと恥ずかしながら思い出して、古傷をゆっくりと癒していた。そんなぬるま湯のような時間が終わりを告げたのは、先輩に彼女ができた時のことだった。

　相手は先輩と同い年の、私から見たら後輩にあたる可愛らしい子だった。ブラウンのポニーテールがよく似合う、ふわふわした笑顔の可愛らしい子。私とは正反対なその子に嫉妬なんてできなくて、改まって言われたその席でただお酒を注いだ。お酌というものが嫌いな私がお酌してるのに、先輩は何も知らない顔でお酒を飲んでいた。

　そこからどう帰ったのかは分からないけど、気が付いたら前々から話をもらっていたFalconさんに連絡を取っていた。トントン拍子に話は進んで、QuizKnockとの契約に合意したのはそれから一ヶ月後の、秋のこと。

　まあ言ってしまえば逃げる場所が欲しかっただけだ。近くにいすぎた先輩を今までと同じ場所で見るのはツラくて、けれど離れるのはもっとツラくて、フリーランスという立場を利用してどっちつかずな態度を取った。
　ね、汚い人間でしょ？

　だからね、川上くん。

「Aさん……？」

　私じゃ貴方には勿体ないよ。

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お久しぶりです。
数カ月の放置、申し訳ないです。
人事異動やらコロナやらでバタバタしていましたが落ち着いてきたので更新頑張ります。

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