背伸びしても届かない#2 ページ23
もし本当にイジメだとしたら……。
「──伊沢さん、俺の分ありますか？」
微妙な空気を変えたのは川上だった。手には川上のカップがある。
川上ってコーヒー苦手じゃなかったっけ？
「あるよ」
「ありがとうございます。Aさんは何やってるんですか？」
「川上くん、いいことを聞いてくれた。取り敢えず何も聞かずに脚立、もしくは椅子を持ってきてほしい」
「なんで……ああ、届かないんですね。取ります」
「何も聞くなって言っただろ！」
「はいはい、取れましたよ」
「ううっ……誰だか分からんけど許さん」
「小さい方が可愛いですよ」
「小さい以外に褒めるとこねぇのか貴様はー!?」
頭をぽんぽんされたAさんが猫のようにキシャーッと牙を剥く。
うん、完全に俺の存在忘れられてるよね？
てか、さっき山森さんが、川上が掃除手伝ったって……。
「Aさんのマグカップそこに置いたのって…──」
「海原さん！ fatal出ました！」
「出た!? やった、今行きます！ ごめん、伊沢くん、私の分は適当に置いておいてくれればいいから！」
エンジニアチームの言ってることが何かはよく分からないけど(SEってすぐに専門用語使うよね！)、嬉しい報告だったらしく慌てて出ていくAさん。残されたのは俺と川上で、名残惜しそうにAさんの背中を見送った川上にしょんぼりと垂れ下がった犬耳と尻尾が見える。
「川上、もしかしてだけどさ」
「はい？」
「Aさんのマグカップ上に置いたのって……」
勢いよく振り返った川上が、俺を見て、ぬるぽマグを見て、もう一度俺を見る。
「内緒です」
うわ、いい顔しやがる。
「――ていうことがあって」
「川上さんひどい！ 低身長仲間として許せないです！」
「山本がAさんの味方するのはいつものことじゃん」
撮影終わりにそんな話をしたら、山本は同じ低身長仲間とあって憤慨しているし(全く怖くない)、福良さんは笑いながら鋭い指摘をして、山本から「福良さんは背が高いからこの気持ちが分からないんですよ！」と怒られている(全く怖くない)。
「川上ってコーヒー苦手じゃなかった？」
「うん。その後超時間かけてコーヒー飲んでた」
「思ったんですけど、川上さんって意外と健気ですよね」
山本の邪気のない一言に、思わず俺と福良さんは目を合わせた。
健気、と言われて思い浮かんだのは、Aさんとクズな元カレのこと。
……案外似た者同士なのかもしれない。
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ゆえ - 前々から楽しく読ませていただいています。QuizKnockではありませんが、川上さんがYouTuberに復帰されたので、続きを書いて頂けませんか？どうぞよろしくお願いします。 (2022年11月3日 22時) (
レス) id: b752a04231 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - 雪結さん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたなら何よりです。いつか最終回だけでも書くので、その時まで気長にお待ちいただけると幸いです！ (2021年3月28日 18時) (レス) id: 54fb5e0695 (このIDを非表示/違反報告)
雪結(プロフ) - 初めまして。このお話を読んでキュンキュンさせていただきました。氷室さんが更新された時､また 見に来ます。待っています。 (2021年3月28日 13時) (レス) id: aec5ea7276 (このIDを非表示/違反報告)
あうる(プロフ) - あれだけ一途に思い続けた彼には幸せになってほしいと私も思います。もちろん主人公にも。いつか更新してもいいなと思える日が来たら、幸せにしてあげてください。そんな彼の姿が見れるのを気長に待ってます。 (2021年3月14日 19時) (レス) id: 88916843f5 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - あうるさん» コメントありがとうございます。ハッピーエンドにたどり着けなかったという言葉にハッとしました。実は最終話だけは書き上げていたので、もしかしたらいつかそれだけ載せるかもしれません。私の書いた彼が幸せになるところを、何より私が見たいので…。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 54fb5e0695 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：氷室 | 作成日時：2020年1月2日 19時
