透明な心#4 ページ20
高校までド田舎の地元にいたけど、田舎特有の窮屈さに我慢ができなくて進学と同時に上京した。
須貝くんとはバイト先で出会った。同い年ということもあって、須貝くんは私にとって上京して初めての友達となった。
ライブのチケットを余らせてしまったからと誘われて、当日須貝くんと一緒に現れたのが元カレ。須貝くんの先輩で、東大生。帰りは方向が同じだった元カレに送ってもらうことになった。
恥ずかしながら当時の私は男性への免疫が薄かった。だから目の前にあるのがラブホだと気付いた時、どうすればいいのか分からなくて、流されるままに気が付いたら一夜を共にしていた。
ヤってる最中のことは正直鮮明には覚えていない。痛かった、怖かった、苦しかった、けど好きと言ってもらえて嬉しかった。そんな曖昧な記憶。
その日から付き合うことになったけど、付き合うって何をすればいいのか分からなかった。ほとんど出歩かないから、遊び場って何があるのかもよく分かってなかったのもある。だからデートと称してホテルに連れられるのも普通だと思っていた。
事が起こったのは須貝くんと飲みに行った時のこと。彼氏ができたとは言っていたけど須貝くんの先輩だとは言ってなかったから、飲んだ勢いで教えた。恋人ができて以来飲みに誘ってくれなくなった須貝くんに、相手は貴方の先輩だから大丈夫だと、だからまた一緒にライブ行こう、そう伝えたくて。
私の話を聞いて第一声が、「あの人、大学に付き合ってる子いるけど」だった。
そもそもあの日のライブは、須貝くんと元カレ、そして須貝くんの同期でもある元カレの彼女の三人で行く予定で、その彼女が来れなくなって急遽私を誘ったらしい。
酔いなんて一気に醒めて、だから今までホテル以外で会わなかったんだ、と冷静に考える自分がいた。
須貝くんに話さなければ良かった。そうすれば先輩が浮気してるなんて知らずに済んだ。そうすれば同期が浮気されてるなんて知らずに済んだ。
後悔はいつだって後からやってくる。
須貝くんが泣きながら謝ってきて、けど何で須貝くんが謝るのかも分からなかった。なんなら今も分からない。
だってそもそもあの時流された私が悪いし、ヤってる時しか好きだと言ってくれないのを照れ屋だと勘違いした私が悪いし、私が嫌がっても止めないのを求められていると勘違いした私が悪い。
全て私の優柔不断さと無知さが招いた出来事だ。
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ゆえ - 前々から楽しく読ませていただいています。QuizKnockではありませんが、川上さんがYouTuberに復帰されたので、続きを書いて頂けませんか?どうぞよろしくお願いします。 (2022年11月3日 22時) (レス) id: b752a04231 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - 雪結さん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたなら何よりです。いつか最終回だけでも書くので、その時まで気長にお待ちいただけると幸いです! (2021年3月28日 18時) (レス) id: 54fb5e0695 (このIDを非表示/違反報告)
雪結(プロフ) - 初めまして。このお話を読んでキュンキュンさせていただきました。氷室さんが更新された時、また 見に来ます。待っています。 (2021年3月28日 13時) (レス) id: aec5ea7276 (このIDを非表示/違反報告)
あうる(プロフ) - あれだけ一途に思い続けた彼には幸せになってほしいと私も思います。もちろん主人公にも。いつか更新してもいいなと思える日が来たら、幸せにしてあげてください。そんな彼の姿が見れるのを気長に待ってます。 (2021年3月14日 19時) (レス) id: 88916843f5 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - あうるさん» コメントありがとうございます。ハッピーエンドにたどり着けなかったという言葉にハッとしました。実は最終話だけは書き上げていたので、もしかしたらいつかそれだけ載せるかもしれません。私の書いた彼が幸せになるところを、何より私が見たいので…。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 54fb5e0695 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷室 | 作成日時:2020年1月2日 19時