透明な心#2 ページ18
「けど本当に気を付けてくださいね。相手が女性だとは限らないんですから」
福良くんの指摘で、確かに相手が男性だった場合、口が悪い割に貧弱な私ではとても太刀打ち出来ないと気付く。
予想してなかったと言ったら怒られた。お母さんかよ。
「──遅くなってごめん!」
店員さんに案内されて入ってきたのは、仕事が終わらなくて残業していた伊沢くん。最近痩せたようでお姉さんは少し心配です。
「サラダ頼んでいい?」
「いいけど俺は食べないよ」
「いいけどピーマンとパプリカは食べれないよ。あとタマネギも」
「出たよ野菜嫌いコンビ!」
ケタケタ笑う伊沢くんは、私でも食べれるオーソドックスなシーザーサラダとビールを頼む。
「そういえば次の企画なんだけど、夏も近いしプール貸し切るってどうかな」
「寒くね?」
「うん、だから来月辺りに撮影できたらなって」
「俺は面白いと思う。Aさん、技術的な面ではどう?」
「水中カメラが欲しいかな。あとラッシュガード」
伊沢くんから言われて、今思いつく限りの課題を並べていく。欲を言うなら水中カメラマンが回答者の人数分欲しい。
「Aさん、泳げる?」
「泳げるけど……泳がせる気?」
「ダメかな?」
「最近の伊沢くんは私を酷使するのが趣味なのかな?」
エンジニアなのに気が付いたら動画に出てるし、最近では記事も書くようになってる。前者は私が承諾したからだけど、後者は私が独立前に広報部にいたと知った伊沢くんがノリで言い出したことだ。
小言を言ってみたら伊沢くんにも自覚はあったのか露骨に目を逸らされた。
「けどAさんの記事も結構好評なんですよ」
「まあアクセス数はそこそこ伸びてるなと思ってた」
私が書く記事はアニメだったり音楽、たまにプログラム言語について。特に最後のはこれから勉強したい人向けに書いたものだから評判がいいのは嬉しい。
「取り敢えず福良さんの企画は面白そうだから次の企画会議で出そうか。福良さんはそれまでにもう少しブラッシュアップさせて、必要な人員とかもリストアップしておいて」
「分かった」
「じゃあ仕事の話は終わり。せっかくだから飲もうぜ!」
それまではCEOの顔をしていたのに、ジョッキを持った瞬間普通の男の子の顔付きになった伊沢くんが乾杯の音頭を取る。私と福良くんは既に乾杯していたけど、改めて杯を合わせた。
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ゆえ - 前々から楽しく読ませていただいています。QuizKnockではありませんが、川上さんがYouTuberに復帰されたので、続きを書いて頂けませんか?どうぞよろしくお願いします。 (2022年11月3日 22時) (レス) id: b752a04231 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - 雪結さん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたなら何よりです。いつか最終回だけでも書くので、その時まで気長にお待ちいただけると幸いです! (2021年3月28日 18時) (レス) id: 54fb5e0695 (このIDを非表示/違反報告)
雪結(プロフ) - 初めまして。このお話を読んでキュンキュンさせていただきました。氷室さんが更新された時、また 見に来ます。待っています。 (2021年3月28日 13時) (レス) id: aec5ea7276 (このIDを非表示/違反報告)
あうる(プロフ) - あれだけ一途に思い続けた彼には幸せになってほしいと私も思います。もちろん主人公にも。いつか更新してもいいなと思える日が来たら、幸せにしてあげてください。そんな彼の姿が見れるのを気長に待ってます。 (2021年3月14日 19時) (レス) id: 88916843f5 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - あうるさん» コメントありがとうございます。ハッピーエンドにたどり着けなかったという言葉にハッとしました。実は最終話だけは書き上げていたので、もしかしたらいつかそれだけ載せるかもしれません。私の書いた彼が幸せになるところを、何より私が見たいので…。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 54fb5e0695 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷室 | 作成日時:2020年1月2日 19時