知らない一面#2 ページ17
「で、Aさんのことは分かったの？」
オフィスから少し離れた喫茶店で偶然出くわした伊沢さんは、俺の正面に着くなり聞いてきた。なんでそんなことを聞くのかと思ったけど、そういえば少し前まで観察日記と称してAさんの写真をTwitterに上げ続けていたんだった。
「分かったような、分からないような。正直微妙ですね」
「その心は？」
「……Aさんって、分かりやすいようで分かりづらくて、顔に出るようで顔に出さない。そんな感じの、まさに掴みどころのない人じゃないですか？」
「まあ、その気持ちは俺も分かる」
サラダをフォークでつつきながら思ったことをそのまま口にすると、伊沢さんは俺と同じ印象を抱いていたようで深く頷いた。
Aさんのことが好きだと自覚して以来、あからさまなアピールこそしなかったがそれなりに仲良くしていたつもりだった。会議に出席している時はなるべく隣に座るようにしてみたり、みんなで飲みに行ったりする時も近くの席をキープしたり、趣味の話をしてみたり。
一人の人間をたった半年で理解しきれるとは俺だって思ってない。けどずっと見続けてたから、全部とは言わなくとも半分ぐらいは理解できているんじゃないかと思っていた。
「なんでQuizKnockに入ってくれたかとか、なんで独立したのかとか、外ではどんな仕事してるとか。仕事だけじゃなくて、大学はどこだったのかとか、どこ出身なのかとか、兄弟はいるのかとか、偏食家なのは知ってるけどじゃあ何が好きなのかとか、そういう小さいことすら分かってなかったんだなって思い知らされました」
足のサイズが22.5だということもつい先日知ったばかり。ネクタイ一つであんなに嬉しそうに笑うなんて知らなかった。なのになんで半分も理解できてたなんて思っていたんだろうか。
「そもそも俺達がその辺を気にしていないっていうのもあるかもしれないね。学歴で売ってる俺達だけど、だからといって人柄や仕事の腕が学歴で決まるとは思ってない。……まあ高校ぐらいは出ていてほしいけど」
「伊沢さんは知ってるんですよね」
「履歴書もらったからね。けどそれは違うんでしょ？」
「はい」
「じゃあ川上が頑張るしかないでしょ。川上が知ってるAさんを信じなよ」
俺が知ってるAさん。
この一年見つめ続けたAさん。
「……伊沢さん」
「ん？」
「ありがとうございます」
「ならここの会計は川上持ちで」
「経費申請しておきます」
後輩にたかるな。
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氷室(プロフ) - ゆうさん» 遅レスで申し訳ないです。コメントありがとうございます。中身だけでなく文法まで見ていただいてありがとうございました。いつかまた書きにきます！ (2021年8月17日 19時) (
レス) id: 1bccd1cc64 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 凄く面白いし文法しっかりしてるしてるし、2人がくっつくまで最後まで見たかったのが悔やまれます (2021年8月5日 11時) (レス) id: b752a04231 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - シャボン玉さん» コメントありがとうございます。14時代からのラベンダー推しです！分かる人がいてちょっと嬉しいです笑 (2019年12月22日 20時) (レス) id: 5b43cc9a48 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - 七海さん» コメントありがとうございます。川上さんが子供っぽすぎるかなあと思っていたので、可愛いと言っていただけて嬉しいです。今後もよろしくお願いいたします。 (2019年12月13日 18時) (レス) id: 5b43cc9a48 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - こんな川上さんいたら、キュン死にする。かわいい(´・ω・｀) (2019年12月13日 16時) (レス) id: b66e2f7b3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：氷室 | 作成日時：2019年11月27日 0時
