手加減無用#1 ページ10
SIDE YOU
「姐さん動画出るの久しぶりですね！」
「そうだね。引き継ぎとかしないといけなかったからねぇ。つか、こうちゃんスーツ似合うね」
「ホントですか!?」
「うん。ネクタイはしないの？」
「苦しいのでギリギリまでは」
持ってきてはいますよ！ と、ポケットからネクタイを取り出してみせるこうちゃん。
久々に出る動画だからちょっとワクワクしていたのに、スーツで来てくれと福良くんに言われて慌ててクローゼットを漁ったのが昨日。普段オフィスカジュアルだから、スーツを着ること自体が久しぶりだったりする。
……まだ着れて良かった。
「ネクタイかあ……それってどうやって付けるの？」
「付けてみます？」
「いいの!?」
女性は普段ネクタイを付けないから、興味本位で聞いてみると嬉しいお返事。こうちゃんからネクタイを借りて、早速首に回してみる。
「そこをこうして……」
「え、どれ？ これ？」
「そこじゃなくて、右手に持っている方を――」
正面から教えてくれていたけど、いつもルーティーンでやってる作業を説明するのは大変らしく、私の後ろから実際に締めてもらうことになった。
背中からこうちゃんの腕が伸びて肩口から覗き込まれたので、見やすいように首を傾ける。
「で、ここの輪っかに通して」
「あー、なるほど。で、反対側に…──」
「何してんスか」
あ、川上さん、お疲れ様です。なんてこうちゃんの声が頭上からする。背伸びしてこうちゃんの肩から顔を出せば、そこにはスーツに眼鏡姿の川上くんがいた。
「川上くん、着替え終わったの？」
「何してんスかって聞いてるやけど」
川上くんの声が低くなって、機嫌の悪さを主張している。
「何って……ネクタイ結んでもらってた」
「正面からだと結びづらいんですよ」
「ネクタイ……？」
「うん、ネクタイ。あ！ ほら、川上くんが変なとこで声かけてくるから忘れちゃったじゃん」
私の首元では輪っかから抜けなくなったこうちゃんのネクタイがぶら下がっている。我ながら不器用だ。
「なら俺が結ぶ。こうちゃん、伊沢さんが呼んでた」
「了解です。姐さん、ネクタイ使い終わったらその辺に置いといてください」
「うん、ありがとね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 369人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
氷室(プロフ) - ゆうさん» 遅レスで申し訳ないです。コメントありがとうございます。中身だけでなく文法まで見ていただいてありがとうございました。いつかまた書きにきます！ (2021年8月17日 19時) (
レス) id: 1bccd1cc64 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 凄く面白いし文法しっかりしてるしてるし、2人がくっつくまで最後まで見たかったのが悔やまれます (2021年8月5日 11時) (レス) id: b752a04231 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - シャボン玉さん» コメントありがとうございます。14時代からのラベンダー推しです！分かる人がいてちょっと嬉しいです笑 (2019年12月22日 20時) (レス) id: 5b43cc9a48 (このIDを非表示/違反報告)
氷室(プロフ) - 七海さん» コメントありがとうございます。川上さんが子供っぽすぎるかなあと思っていたので、可愛いと言っていただけて嬉しいです。今後もよろしくお願いいたします。 (2019年12月13日 18時) (レス) id: 5b43cc9a48 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - こんな川上さんいたら、キュン死にする。かわいい(´・ω・｀) (2019年12月13日 16時) (レス) id: b66e2f7b3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷室 | 作成日時：2019年11月27日 0時
