nkm/会いたい ページ7
※Nakamuさんの表記をなかむ、Brooookさんの表記をぶるーくとしています。
夢主は登場致しません
「あーあ、早くAに会いたいな」
そう言って、なかむはチューハイを喉に流し込んだ。
「この前Aの家に泊まらせてもらったんだけどさ、朝起きたら隣にAいるの、まじで幸せすぎて俺死にそうだった…」
夜が更ければ酒場は賑わう。
俺たち"ワイテルズ"の6人は、なかむに半ば無理やり引っ張られる形で居酒屋に集っていた。こうして6人で飲み行くのは、半年ぶりといったところか。
自覚があるのやら無いのやら、何かとなかむの彼女ーーAちゃんの名前を出してくるのは、ふたりが付き合い出した当初から変わらないなかむの癖だ。最初こそ惚気けやがってと些か不満に感じていたが、親友の幸せは俺にとっても喜ばしいものであり、今では当たり前のものとして受け入れている。
普段ならこのまま受け流していた。なかむの幸せを壊してはいけない、と。それが"ずっ友"と称される俺の役目なのだと信じて疑わなかった。
今日も勿論そのつもりだった。未だ慣れはしないが、なかむと会う前に腹を括ってきたつもりだ。いつもと変わらない生産性のない無駄で愉快な惚気会。何が違ってしまったのか。
頭で考えるよりも先に、感情が溢れてしまった。
「なぁ、やめろよ」
俺の面持ちと声のトーンで、ただ事では無いと察知したのだろう。先程まで天に突き刺さってしまいそうだった口角は萎れ、一気に怯えた表情へと変貌してしまった。
感情を隠せていないのはなかむだけではない。しゃけも大きく目を見開いて、視線を俺にぶつけてきている。反してぶるーくはにこにこと、スマイルは変わらず口を真一文字に結んで、互いに我関せずと言わんばかりの態度だった。
「え、な、なに？ごめん惚気ばっかで嫌な思いさせちゃった…？」
公衆の面前で無ければ、今すぐこいつをぶっていたと思う。
胸に巣食うこの行き場のない気持ちが、なかむに矛先を向けているのがわかった。
「お前、本気で言ってんのかよ、なあ。だって…」
きりやんが立ち上がり、俺たちの間に割って入ろうとする。耳に入った制止に気が付かない振りをして、感情の赴くままに呟いてしまった。
"Aちゃんはもう、この世に居ないんだよ"
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作者名：えん | 作成日時：2023年9月26日 17時
