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kr/大好きな君へ。 ページ31
※専門知識はありません
目が覚めると、全身の自由が拘束されていた。口元はハンカチのような布で縛られ、手足それぞれは結束バンドで固く締め付けられている。まるで漫画の世界のようなその異質さ故に、私の自室の平凡さが際立った。
昨晩の記憶を思い起こしてみるが、この状況に心当たりは無い。自身の名が報道される未来を想像し、背筋が凍る思いがした。
しかし、意識覚醒からおおよそ5分後といったところ、私の部屋の扉を開いたのは紛れもない私の恋人、きりやんであった。
ああ、なんだ、きりやんか。
冷静に考えてみればそう笑って許せるような状況でも無いのだが、目の前に出現した見知った顔に、それだけで安堵の気持ちが溢れていた。趣味は悪いが、ちょっとした悪ふざけなんかであろう。そう自身の内で納得し、拘束を解くよう彼に目で訴えかけた。
彼はそんな私の反応に気がつき、そのまま擦り寄ってくる。私の口元の布に手を触れたかと思うと、そのまま私の頬に唇を落とした。
「ふふ、外して貰えると思っちゃった？ごめんね、A」
彼はそう言って私を嘲笑う。そのあまりに妖艶な笑みに酔いしれる心地がした。
単なる悪ふざけも後を引けばただの迷惑行為でしか無い。分別のある人間である彼は、明らかに普段と様子が異なっている。前日の酒が抜けていないのか、なんて呑気な考えを浮かべてみるも、それは彼の笑みの前に塵と化した。
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作者名：えん | 作成日時：2023年9月26日 17時
