【WT】貴方と紡ぐ【短編集】 (ページ20)

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kn/男は狂喜を噛み締めたページ20

妖しい笑顔を浮かべた男が、そこにいた。

「この前あげたばっかりなのに、もう使いきっちゃったの？」

まるで幼い我が子を叱るように目の前の女に確認すると、女は弱々しく頷いた。

「もう、Aは悪い子だなぁ」

女が、焦らすなと言わんばかりに懇願する。もはやそこに、かつての面影が残されていない。

「俺も本当はすんなりあげたいんだよ？けどさ、そろそろお金ピンチなんじゃない？」

男の鋭い一言に、間が悪そうに俯いた。

時に、1gの重みは1gを凌駕する。しかし、女の手元にはその1gすらも残されていない。女は、重々承知の上だった。それでも尚縋る以外の選択肢は残されていなかったのだ。

「大丈夫、もうすぐ楽にしてあげるよ」

女の陰りに光が差す。
しかし、それは一刹那の夢であった。

「俺の言うこと、ちゃーんと聞いてくれれば、ね？」

女は、絶望の味を知る。