【WT】貴方と紡ぐ【短編集】 (ページ19)

今日:26 hit、昨日:45 hit、合計:13,193 hit

・ページ19

黙々と昼食をとるサラリーマンも、手を繋いでにこやかに談笑している家族連れも、MacBook片手に全力疾走する大学生も、道行く人々が皆私を凝視する。
早朝だとなのだと思い込んでいたのだが、どうやら世界は既に昼を迎えたらしい。太陽光が痛い。視界が歪む。痛い。辛い。痛い。

知っていた。彼が遠距離恋愛をしている事も、本当は年上がタイプな事も。人懐っこく金髪を靡かせていた彼は、大学でも注目の的だったのだ。
私ってば、最低だ。最低、最低。分かっていたのに流された。喜んで尻尾振って馬鹿みたい。

頬を滴る水滴が体温を奪っていく。それが雨粒なのか涙なのか、それを知る術は持ち合わせていない。

せめて一言恨み言を押し付けてやろうとして、スマホを取り出す。
スマホのロックを解除して、そのまま指を止めた。

彼の連絡先を、私は知らない。