【WT】貴方と紡ぐ【短編集】 (ページ18)

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気がつくと、薄暗い部屋にいた。見慣れない天井と固めのベッド。隣に目をやると、未だ目覚める気配の無いきりやん先輩が、生まれたままの姿で横たわっている。

昨晩に関して断片的な記憶しか残されていないが、、結局の所、私たちはただの男女だったということなのだろう。

努力して思い出す程の興味も無く、布団から出ようとすると、頭に鋭い痛みが走る。ああ、これが噂に聞く二日酔いというやつか。

頭痛から意識を逸らそうと、無理やり両足に力を込めた。布団の温もりで今まで気が付かなかったが、どうやら私も着衣が無いらしい。奥のソファに乱雑に投げられたワンピースを手に取り被る。まだ意識がはっきりとしていない。髪の毛に触れると、布で擦れぼさぼさになってしまっていた。

他人の家にしてはいささか礼儀知らずかと多少逡巡したが、結局洗面台へと直行した。よくある平凡な一枚鏡。捨て置かれたヘアゴムを横目に、その辺の適当なブラシを手に取り、頭を撫でるようにして絡まりをほどいていった。明かりのないこの部屋で、ピンク色のブラシが鈍く光っている。

ある程度満足のいったところで、台所へと移動した。流しは水垢一つなく美しい。さて、他人の家の冷蔵庫を勝手に開くのは、流石に気持ちが悪いだろうか。

「ん…あれAちゃん？あぁまだいたんだ」

『…おはようございます』

まだ意識が覚醒しきっていないのであろう、ぼんやりと目を薄めながらきりやん先輩が声をかけてきた。

「もしかして朝ごはん作ってくれるのー？」

先輩の腕が、私の腹部を後ろから締め付ける。輝く髪の毛が視界の端に映った。昨日とは違う、柔らかなシャンプーの香り。

『そのつもりでしたけど、やめました』

「え？」

先輩が油断し力を緩めたので、その隙に両腕を振り払う。面食らう先輩をよそに、そのまま手荷物だけを抱え、玄関を勢いよく飛び出した。