【WT】貴方と紡ぐ【短編集】 (ページ14)

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##月##日
Aとサークルの仲間たちで、駅前の焼き鳥屋へ飲みに行った。お酒に強くないAがやけに呑んでいるものだから訳を尋ねてみると、どうやら彼氏と喧嘩をしてしまったらしい。街中で女性と親しげに歩く彼氏を見かけ、それについて後日問い詰めた事から口論に発展したという。目元が腫れていた。昨日あれほど涙を零していたから無理もない。きちんと冷やす様子もなく寝落ちてしまっていたし…ああ、思い返すだけでうっとりする。浮気をされたらすぐにでも別れると以前聞いたのでとっくに別れたものかと思い込んでいたが、どうやら相手が引き下がっているらしく、今は距離を置いているとの事だ。女々しい男だ。自分の存在がAの心を痛めつけていると理解できないのだろうか。

##月##日
あれから数日。俺からの助言もあって、無理やり別れる形に持っていったそうだ。何度も俺の腕の中で、心の内を吐露していた。今すぐには難しくとも少しずつ忘れていこう、俺と一緒に、と言う俺の言葉を聞くと、Aは幾ばくか思い悩んだ後、静かにこくりと頷いてくれた。手間は掛かったが、Aとの幸せの為だと思えば苦ではない。
ああ、俺はなんて幸せ者なのだろう。

『なかむ〜？何してるの〜？』

遠くから、金平糖よりも甘い声がした。
手元の日記帳を閉じ、表紙をそっと撫でてみる。それに付けられている真紅のカバーは、俺の愛情を具現化したようだった。

「…これはもう、要らないよね」

自身の机の引き出しに冊子をしまい込むと、人肌にそぐわぬ冷たさの鍵を握りしめ、ぐっと施錠する。

「なんでもなーい！今行く〜！」

そうして俺は、Aの腕の中へと飛び込んでいった。