【WT】貴方と紡ぐ【短編集】 (ページ1)

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kn/ふたりっきりページ1

久しぶりに集まろうと言い出したのは、きんときだった。
高校を卒業してから2年、疎遠になっていた地元の仲間たちとの再会はとても喜ばしいもので、二つ返事で了承した。

喜ばしく思っていた気持ちは、他のみんなも同じらしい。普段は飲まない量のお酒を、騒がしいコールに乗せて流し込んでいく。宅飲みだからと言え少々遠慮し無さすぎではないかと思ったが、どうやら問題は無いらしい。いつしか聞こえてくる声は段々と少なくなり、最後に残ったのはお酒を飲まないきんときと私だけになった。

「あはは、みんな潰れちゃったね」

『だね。全く誰が介抱すると思ってるんだか…』

まあここきんときの家だし、きんときに全部任せちゃおー！だなんて軽口を叩けば、いつもは笑って返してくれるはずのきんときが、沈黙を貫きただ怪しげな笑みを浮かべた。吸い込まれそうな瞳に見つめられ、思わず息を呑む。いつもとは違う、私だけを見つめた、その瞳。

「そうだね、ここは俺の家だよ。そしてAは、俺の家で、俺とふたりっきり」

群青色の双眸が細められる。まるでこの時を長らく切望していたかのように。

人1人分はあったはずの彼との距離は、彼に肩を寄せられ無きものとなっていた。文字通り、目と鼻の先に彼がいる。彼の柔軟剤の香りが弾けた。

「嫌なら逃げてもいいよ、逃がさないけど」

私たちの夜は、まだまだこれからのようだ。