with you3 【Kazuma.k】 (ページ1)

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止まった針を動かしてページ1

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時の流れとは残酷な程に誰にでも分け隔てなく平等で、ついにその日は訪れる。

来て欲しくない瞬間が近付けば近付く程に、キリキリと痛み出すお腹は如実に自分の緊張を表している。
ああやだな、これ、どうにか逃げ出せないかな。
いや逃げるも何も実家以外に行く当てないし、これは実質的な逃げるではなくて感情的な話であるからしてやはりとてもお腹が痛い。
そうして時間を費やしていると、グループLINEで送られてきた到着予定時間はすぐにやってきてしまった。

一応は遠慮がちながらも大人数ならではのたくさんの声がすぐそこまで近付いてきているのを感じながら、リビングから動けなかった。
ふうと長く息を吐いてよしと覚悟を決めてから、重たい扉を開けるのと、待ってましたと言わんばかりに大の男たちの集団が流れ込んできたのはほぼ同時だった。

「ただーいまー！」
「お、おかえり」
「A元気やった！？」
「なんか背え小さくなってへん？」
「いや、なってないですけど…」
「あ、これお土産です」
「あ、ありがと」
「うおー！飯できてる！Aの飯久しぶり！」
「今日なに？！」
「うわ肉だ！！！」
「はいいっちば～ん！」
「ちょ、ずる！！」
「いや、みんなあの」
「荷物は各自自分の部屋に置いてくる！！！手洗ってからリビングで飯、な？？」
「「「…ハイ」」」

余りにもいつも通りかつ久しぶりのパワフルさに押され気味になっている所に、神の救いもといやましょーさんの一声で、あれだけ騒がしかったメンバーがぞろぞろと静かに自室へ向かって行く。
す、すご……と感心していたら、帰ってきて早々ごめんなとやましょーさんに頭をぽんぽん撫でられて謝罪される。

い、いえ貴方様のおかげで今解決しましたんで…
無言でそれぞれの自室へと散って行く大人数集団が物珍しくて思わず目で追っていると、その最後尾に壱馬くんの姿を捉える。
長い前髪から覗く瞳は、一度もこちらを向くことなく前だけを見据えている。
…うん、そうですよね…。

この中の誰が忘れてたってそういうところ一番しっかりしてるし物覚えの良い壱馬くんが、無かったことにする方がむしろしっくりこない。
いや、別に壱馬くんに直接的に何かしたわけでもないんだから、それ自体がおかしな話なんだけども。
うーん、どうしたものか、と肩を落としているところに掛かった声は知っているそれよりも低くて思わずびくりと肩を揺らす。

「ちょっときて」

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