黄金時代に舞い戻りまして【稲荷崎】

128：恋愛尋問 ページ36

▽．





「……で、まだウジウジしてる、と」

ジト目でこっちを見る角名

『いやあ、ウジウジしてるっていうか何というか…』
　
成り行きで始まった恋の近況報告
報告っていうか、もはや取り調べである

確かに角名の言う通り、気持ちを自覚して一ヶ月ちょい
…見事なまでに何も変化してない


「Aが勇気を出せていないこの間に侑２人に告白されたってよ」
『えっ！マジ？』

一ヶ月で２回とかどんなペースだよ
しかも夏休みだったよね？？

「なんかインハイのときにファンが告ってた」
マジですか……

「ま、もちろん断ってたけど」
その言葉に安堵すると、分かりやすすぎ と笑われる

「だからモテるっつったでしょ」

モテる、なんて分かってはいたけどここまでとは思わないじゃん……



「早めに気持ち伝えないと後悔するよ」

真っ直ぐ少し悲しそうな目が見つめる
思わず目を逸らした

『でも、伝えて断られたら…？』
気まずくなるし、もしかしたら部活で迷惑かけるかも

なにより、今の関係が壊れるのが怖い


「…伝えないよりマシでしょ。それに関係が壊れたとしてもそのうち戻るよ」

俺たちもそうだったじゃん、という風に目が訴えかける

そうだけど、でも


「らしくないじゃん。いつもの当たって砕けろ精神はどうしたの」

図星を突かれ、下を向く


はあ、とため息をついた角名が立ち上がる



「…ま、がんば」

こちらに歩いてきたと思ったら、ぽん、と頭の上に手がのった

そしてそのまま歩き去る


「振られたら慰めてあげるよ」

なんて、揶揄うようにいわれ思わず顔をあげて角名を睨む

ふり返りがてら、べ、と舌を出す角名に思わず笑いが溢れた


伝えて後悔する方が、伝えないで後悔するよりずっといいや

前を向いて小さく笑った




・


角名くんの本音

(伝えないと後悔するよ、俺みたいに)

(好きな子の恋愛相談のったんだから頭触るぐらい許してくれてもいいよね。俺頑張ったし)



・

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