第139話 "機械の手" ページ43
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「うわっ!」
背負った金属製のリュックの重みに少しよろけると、そのはずみでリュックから飛び出していたヘッドセットがAの頭部にぴったりと装着される。ウィーンという機械音を立てながらヘッドセットが変形し、半透明な青色の板状パーツがAの両目を遮るように下りてくる。
ピピピッという音とともに、半透明な板に数式やグラフ、メーター、文字列が次々に表示されていく。Aは無言のまま一心に高速で更新されていくそれらを目で追う。
「お、おいお前…。だ、大丈夫なのか?」
上官にあたるその男は、目の前で次々と展開されていく出来事にただあわあわとしていた。先ほどまで隣にいたはずの海兵が、航海士専用の
実際、訓練でこの道具を彼も背負ったことがあるが、機械の腕がでたあとヘッドセットを装着した先は、ただ茫然と立っているしかできなかった。それなのに…。
あのヘッドセットに付属している板状のパネルには現在の海のあらゆる情報と船の情報が同時に羅列されていく。それを読み取って船をどう操作するのか正しい方法を頭に思い浮かべることができれば、次は、背負った道具から操作パネルが出てくるのだ。
「あ、これが操作パネルか。これを使ってこの機械の手を動かせばいいんだな。」
Aは、驚き目を見開く上官の目の前で操作パネルをまるで鍵盤を弾くように、指をうごかしなめらかに操作していく。パネルをタッチするたびに鳴る微妙に音が違う機械音がまるでメロディーのようだ。
「ほほぉ…。驚いた。あれを扱える奴が俺以外にいたとはな。」
いつの間にか上官の隣にたっていた航海士は、目を細める。目じりに刻まれたしわの数は彼が潜り抜けてきた修羅場の数と同じくらいある。このベテラン航海士をうならせる目の前に立つ海兵はいったい何者なのか。
「いや、今はそれよりも機関室に割いた人員を他部署へ再配置しなければな。」
そういいながら、突如あらわれ、制御盤をあやつりだした無数の機械の手に翻弄される海兵たちに指示を出し始めた。
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あむさぎ(プロフ) - 撫子さん» コメントありがとうございます!!とっても嬉しい言葉を頂けて…はい!がんばります!! (2021年1月27日 23時) (レス) id: b3e4a8557d (このIDを非表示/違反報告)
撫子(プロフ) - 早く続きが読みたくなりました。応援してます。頑張って下さい。 (2021年1月25日 23時) (レス) id: c1d82146a2 (このIDを非表示/違反報告)
あむさぎ(プロフ) - かなでさん» コメントありがとうございます!イスカ登場させたいと考えていたので無事に登場出来て良かったです!はい!頑張ります! (2021年1月25日 18時) (レス) id: b3e4a8557d (このIDを非表示/違反報告)
かなで - イスカ大好きなので、登場する小生があってめっちゃ嬉しいです!これからも頑張って下さい! (2021年1月24日 9時) (レス) id: dda8ded754 (このIDを非表示/違反報告)
あむさぎ(プロフ) - ノノさん» そうなりますね!ちょっとワクワクします!大学の課題で手いっぱいでなかなか更新できてませんでしたがすこしずつ書き始めます! (2020年6月18日 11時) (レス) id: b3e4a8557d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2020年5月30日 16時