第128話 "胸のざわめき" ページ32
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「私はかつて、故郷を海賊に襲われ、両親を亡くした。そして、自分のように海賊によって家族を失う子供たちを生み出さないために海軍へと入隊したんだ。だから、エースのことも本気で捕まえようと追いかけていたよ。かなりの賞金もかかっていたし、相当な悪党だと思ってね。実際は極悪人ではなかったけど、それでも厄介なヤツだった。」
Aも、かつて賞金稼ぎのためにエースの首を狙っていた。イスカの言葉に自分の過去も思い出し苦笑する。
「追いかけまわしては、逃げられ、また追いかけというお決まりのパターンのようなものさえできるくらい長い間エースを追随していたんだが、その間にわたしはエースが私の故郷を襲ったような海賊とは違うことに気づいていた。そして、海賊だけれども悪いやつではないということにも。」
そこで、イスカはぐっと奥歯をかみしめ、つらそうな表情を見せる。思わず、Aが心配そうな顔をしていると、それに気づいてイスカは大丈夫だという。
「私はある日の出来事を境に、海軍への不信感を抱くようになる。詳しくは、すまない、聞かないでくれ。だが、私はその時、エースに『海賊じゃなく賞金稼ぎとしてオレの船に乗れ』と誘われたんだ。」
イスカはくすくすと笑う。
「海賊をどうしても認められない私に賞金稼ぎになれと言ったんだ、アイツは。」
その時、鍋が沸騰して煮汁が吹きこぼれる。Aは、慌てて鍋を火から遠ざける。そして器によそいながら、内心、胸の中がどろどろと、していることがイスカにバレていないかと焦っていた。
エースとの関係を聞いていたA。だが、イスカが嬉しそうにエースの名前を口に出すたびに胸がずきりと痛む。エースが船に誘ったという事実もまたAの胸を突きさした。
「だが、その誘いを私は断ったよ。正直差し出された手を握りたいと思った。けれど、私は、まだ海軍に残ってやるべきことがあると思ったんだ。それに簡単に今まで信じてきたものを裏切ることはできなかった。」
イスカはAにさしだされた器を御礼を言いながら受け取ると、少し汁を飲んでからまた話を続ける。
「そこで私とエースとの縁はいったん切れた。私はひたすらに正義のために海軍で奮闘した。海賊は嫌いだが、エースのことは認めているよ。その力も志も。」
Aの胸がざわめく。
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第129話 "腐れ縁"→←第127話 "焚火に照らされながら"
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あむさぎ(プロフ) - 撫子さん» コメントありがとうございます！！とっても嬉しい言葉を頂けて…はい！がんばります！！ (2021年1月27日 23時) (
レス) id: b3e4a8557d (このIDを非表示/違反報告)
撫子(プロフ) - 早く続きが読みたくなりました。応援してます。頑張って下さい。 (2021年1月25日 23時) (レス) id: c1d82146a2 (このIDを非表示/違反報告)
あむさぎ(プロフ) - かなでさん» コメントありがとうございます！イスカ登場させたいと考えていたので無事に登場出来て良かったです！はい！頑張ります！ (2021年1月25日 18時) (レス) id: b3e4a8557d (このIDを非表示/違反報告)
かなで - イスカ大好きなので、登場する小生があってめっちゃ嬉しいです！これからも頑張って下さい！ (2021年1月24日 9時) (レス) id: dda8ded754 (このIDを非表示/違反報告)
あむさぎ(プロフ) - ノノさん» そうなりますね！ちょっとワクワクします！大学の課題で手いっぱいでなかなか更新できてませんでしたがすこしずつ書き始めます！ (2020年6月18日 11時) (レス) id: b3e4a8557d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2020年5月30日 16時
