元彼が知らんうちに転生して俳優になってた

金輪際現れない ページ9

「まさかアクシデントごと映像に収めるとは」

「情報が早いな。どっちだ？」

「鏑木ちゃん」

「僕は現場のスタッフから聞いた」



有馬かなの親と関わる気はないAは番組の二次会は断り、予め約束していた料亭へ行った。

先客は雷田とフリーのプロデューサーである鏑木だ。

鏑木は仕事で縁ができたわけではなく、たまたま通いのバーが一緒だったという繋がりだ。しかし仕事の話をする時の方が多い。



「アクシデントを映えさせるアドリブなんてよく咄嗟に実行できるねぇ。慣れてるとはいえ」

「その方が美しいだろう」

「うわ」



彼らとて今まで山ほど役者を見てきたが、Aほど一目で凄いと思わせる人間はいない。

得た賞も多く、世界から認められている彼女がなぜ日本に留まっているのか不思議なくらいだ。



「かなちゃん、これから周りの役者にAさんレベルを求めないと良いですけどね」

「なんだきみ有馬が好みだったか」

「断じて違う」








「実際どうです？有馬かなは」

「カワイイし実力もある。光るモノも持ってる。周りの人間次第だろうな」

「周りの人間、ね。でもそう言うAさんにはこれと言って指導者的な人や頼りになる人はそう何人もいたっけ？」

「きみがいた」

「いきなりぶっ込むのやめて貰っていいスか」

「お茶こぼしてるぞ」



ちなみに「きみがいた」とは「雷田は変わらずAに対して辛辣な後輩幼馴染でいてくれた」という意味である。

幼馴染ゆえに雷田本人には一応意味は伝わるが、周りが勘違いするのでやめてほしい。



「…そういえばあれから1年経ちましたけど、失踪した彼氏見つかりましたか？」

「………泣きそう」

「え、撮影時(さっき)の涙戻ってきた？？」

「…あの野郎ぜんっぜん髪の毛一本も見つからない。失踪するならそう言ってから居なくなれよ【自主規制(ピ────)】野郎が！」

「いつもより酔い方酷いな。訊かなきゃ良かった……ってちょっと待てここで脱ぐな！」

「ならきみが脱げ」

「どっから出しやがったそのセーラー服！アンタ中学高校ブレザーだっただろ！！」



一服から戻ってきた鏑木は、セーラー服を片手に雷田の服を剥こうとするAを見て、そっと襖を閉じて見なかったことにした。




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オチは雷田くんじゃないらしいです。

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