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それでもまだ君と君にだけは言えずにいたけど ページ24

『愛したかった』

『愛されたかった』

『アイドルになればファンを愛せると思った』

『母親になれば子供を愛せると思った』



少女の叫びに、“A”は応えなかった。

応えられなかった。

星野アイが“アイ”を作っていたのと同じように、不知火Aもまた身内と幼馴染以外相手には“魔女のA”を演じていたからだ。

アイと接している時も全て“魔女のA”だった。

では“不知火A”は応えられたかと言えば、それは否だった。

不知火Aはアイと違って、人を愛すことを知っていたからだ。

不知火Aはアイのファンでも身内でもなかったからだ。


Aは両親を、姉を、姪を、幼馴染を愛している。

雨宮吾郎のことも愛していた。

普通の愛を知っていたからこそ、アイがまず“それ”を向けるべき相手は自分じゃないと思っていたのだ。



『B小町…は無理だろうけど、双子は本物だろ』



アイにはAよりもよほど付き合いの濃い人間がいたはずだ。

だからその人達に愛を向ければいいと思っていた。

傍目で見ても仲が良いとは言えない、というか均衡を崩している張本人であるアイが仲間達と友愛を成立させるのは数年かかるだろうが、血の繋がった肉親なら愛せると思っていた。


つまりAは普通の親愛を知っていたからこそ、普通ではないアイにとって親愛を理解することがどれだけ難しくて時間のかかることなのかわからなかったのだ。

それに加え、双子も親愛を知らなかった。



「…ルビーはアイドルで、アクアは役者さん?2人はどんな大人になるのかな」



ランドセル姿も入学式も授業参観も見たかった、とアイは喋られるうちに残した悔いを置いていく。



「……Aさん、私の声が聞こえてるなら、アクアとルビーのことお願い」

「………!」

「面倒見てとか、守ってとかは言わないけど、私みたいな目にあわせないでほしいな」



拒否することはできた。

だがAはそうしなかった。

アイを愛していたわけではない。

双子に相応の情があったわけでもない。

それでも大事だった。

大事だったが故に、アイの遺言(呪いの言葉)は断れない理由になってしまったからだ。



「えっと、他に……、…あ、これは言わなきゃ」

ああ、やっと言えた→←その言葉がいつか本当になる日を願って



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HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» ありがとうございます!魔女ちゃんのお相手は誰になるんでしょう… (10月21日 22時) (レス) @page15 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 更新ありがとうございます!!作者さんの立ち位置が自分と似過ぎていて滅茶苦茶分かる!と思いました、丸。 (10月16日 22時) (レス) @page13 id: e0721d2717 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» 神作なんて光栄です!頑張ります。ふぉん鴉さんコメントありがとうございました。 (7月23日 12時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 自分の中での神作有難うございます。゚( ゚இωஇ゚)゚。これからも頑張ってください!応援してます(oˆ罒ˆo) (7月23日 6時) (レス) id: ecacc3dc55 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - らーさん» 頑張ります。らーさんコメントありがとうございました。 (7月22日 16時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:HANON | 作成日時:2023年7月16日 1時

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