その言葉がいつか本当になる日を願って ページ23
電話の向こうが騒がしい。
男の正気を失った声から聞こえる「痛い」という言葉でおおよその状況は察しがついた。
アイが男に襲われたのだ。
だがAは何もできなかった。
不知火Aと星野アイは互いの家を知らないからだ。
Aのスマホには万が一のための録音機能はついているがGPSは使えない。
救急車も警察も呼べない。
仮に呼べたとしても、現場にいるアクアの方が早いからあまり意味がない。
故にAは呆然と立ち尽くして、電話の向こうの声を聞くしかなかった。
「私なんて元々無責任で、どうしようもない人間だし、人を愛するなんてよくわからない……
Aさんみたいな人になれたらって何度も思ったよ。
それでも…私は代わりに、皆が喜んでくれるようなきれいな嘘をついてきた。
いつか、嘘が本当になることを願って」
アイは、Aが自分のことを喰い物だと思っていることを知っていた。
Aもまた、アイは自分に憧憬を抱いていることを知っていた。
しかし面倒なことに、互いの気持ちは察していても、相手の本質そのものには理解を向けていなかった。
「頑張って、努力して、全力で嘘をついたよ」
血の滲むような努力の上で成り立っていた“嘘”。
何のために、と訊くまでもない。
人を愛したいからだ。
故にAは、「全員を愛す必要は全くない」なんて残酷な事実は言わなかった。
「私にとって嘘は愛」
いつか本当になることを願って、アイは
その“いつか”を潰したのが紛れもない自分だと知った男は、発狂してどこかへ走り去った。
追いかける者は誰もいない。
「しゅ、出血が……腹部大動脈かクソ……！！」
“出血”“腹部大動脈”
医療ドラマの役作りで最低限の知識を頭に入れていたAは、それがどれだけ助かるのが難しい致命傷か分かってしまった。
清潔なタオルでビニール袋越しに傷を圧迫するアクアの処置は正しいが、ナイフを抜かれてしまったのもあり出血は止まらない。
「ごめんね、多分これ、無理だぁ」
アクアを止めるようにアイは抱きしめる。
視界はぐらぐらして、口の中は逆流した血の味でいっぱいで、鉄の臭いがこもる。
なのに、体が痛くない。
「今日のドームは中止になっちゃうのかな…皆に申し訳ないな。映画のスケジュールも本決まりしてたのに。監督に謝っておいて。
Aさんも…ごめんね。ドラマ、共演するの楽しみだったのに」
それでもまだ君と君にだけは言えずにいたけど→←今日も嘘をつくよ
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HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» ありがとうございます！魔女ちゃんのお相手は誰になるんでしょう… (10月21日 22時) (
レス) @page15 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 更新ありがとうございます！！作者さんの立ち位置が自分と似過ぎていて滅茶苦茶分かる！と思いました、丸。 (10月16日 22時) (レス) @page13 id: e0721d2717 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» 神作なんて光栄です！頑張ります。ふぉん鴉さんコメントありがとうございました。 (7月23日 12時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 自分の中での神作有難うございます｡ﾟ( ﾟஇωஇﾟ)ﾟ｡これからも頑張ってください！応援してます(oˆ罒ˆo) (7月23日 6時) (レス) id: ecacc3dc55 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - らーさん» 頑張ります。らーさんコメントありがとうございました。 (7月22日 16時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：HANON | 作成日時：2023年7月16日 1時
