検索窓
今日:138 hit、昨日:114 hit、合計:32,395 hit

今日も嘘をつくよ ページ22

「“三度目の正直”と“二度あることは三度ある”ってどっちが本当なんだろうな」

「いきなり何スか」

「どうでもいいことが急に気になった。“親の心子知らず”とか、“子は鎹”とか」



いつもはトーストとヨーグルトで済ませる朝食だが、急に和食が食べたくなり、作れないからと雷田の家に凸したA。

今に始まったことでもないので、慣れた様子でAの分のご飯と味噌汁をよそってあげた雷田。

10年以上経つが、幼馴染2人が食卓を囲む光景は変わらない。



「ころもちゃんとフリルちゃんは?」

「休日だから姉さん達とお出かけ」

「アイのドーム公演は?」

「開演時間まで特にやることはない」

「花束とか贈らなくていいんスか」

「ドラマの撮影がクランクアップした時に贈る」

「意外と粋ですよねアンタ」

「何だ意外とって」



Aが舞台演劇で世話になった劇団の演出家は、公演の初日に危篤状態に陥り、そのまま帰らぬ人となった。

普通なら公演を中止するか、開演しても演技にまったく身が入らない状態になる。

だがAは最後まで演じ切り、彼女につられて共演者たちも千秋楽まで演じ切った。

共演者の中には10歳ほどの子供もいた。

その演出家への供養になれるのは、彼が文字通り命懸けで創り上げた舞台を最後までやり遂げることだと、彼女自身で体現したからだ。


関わった人間全てに対しての配慮のない心遣い(・・・・・・・・)が、彼女を魔女たらしめる要素の一つだ。



「花束の代わりに気の利いた言葉の一つでも贈ったらどうです」

「……あの子から電話が来たらな」



変なところで素直じゃないな、と雷田の微妙な顔を見たのが数十分前のこと。

ジョギング中に本当にアイから電話が来た。



「ちゃんと起きれたみたいだな」

〈こんな日に寝坊はしないよ……って誰か来たみたい。ちょっと待って〉



Aは待とうとしたが、すぐにアイの言葉に疑問を抱く。

アイは「誰か」と言った。

つまり来る約束をするはずの宅配便や事務所の人間ではない。

知らない人なら“普通は”玄関を開けたりしない。

しかし、アイは“普通の”家庭で育ったか。



「……っアイ!待っ___」









『嘘つきだらけのこの世界で、嘘をつく覚悟をしたやつがアイドルで、嘘をつかない覚悟をしたやつが役者という』

『だからきみはアイドルで、私は役者なんだ』



それが、アイとAとの最も古い記憶で、アイにとって最も深く刻まれた言葉だった。

その言葉がいつか本当になる日を願って→←弱点なんて見当たらない



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (115 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
344人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» ありがとうございます!魔女ちゃんのお相手は誰になるんでしょう… (10月21日 22時) (レス) @page15 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 更新ありがとうございます!!作者さんの立ち位置が自分と似過ぎていて滅茶苦茶分かる!と思いました、丸。 (10月16日 22時) (レス) @page13 id: e0721d2717 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» 神作なんて光栄です!頑張ります。ふぉん鴉さんコメントありがとうございました。 (7月23日 12時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 自分の中での神作有難うございます。゚( ゚இωஇ゚)゚。これからも頑張ってください!応援してます(oˆ罒ˆo) (7月23日 6時) (レス) id: ecacc3dc55 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - らーさん» 頑張ります。らーさんコメントありがとうございました。 (7月22日 16時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:HANON | 作成日時:2023年7月16日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。